税理士への年末調整だけの依頼は可能?単発依頼の料金相場と対応事務所の探し方


年末調整のみを税理士に依頼したい個人事業主・小規模事業者の悩み

従業員を雇用している個人事業主や小規模企業にとって、毎年訪れる年末調整は大きな負担です。「顧問税理士はいないけれど、年末調整だけ誰かに任せたい」「確定申告は自分でできるが年末調整だけは複雑で難しい」と感じている方は少なくありません。実は、税理士への年末調整だけの単発依頼は可能であり、多くの税理士事務所がスポット対応を行っています。

本記事では、年末調整のみを税理士に依頼する際の料金相場、依頼できる業務範囲、対応してくれる税理士事務所の探し方まで、実務経験に基づいて徹底解説します。従業員1名から10名以上の規模別に具体的な料金事例も紹介しますので、自社の状況に合わせた最適な外注方法が見つかります。

年末調整業務を外部に委託することで、本業に集中できる時間が増え、計算ミスや提出漏れといったリスクも回避できます。顧問契約なしでも利用できるスポット依頼の実態を、料金体系から具体的な依頼手順まで詳しく見ていきましょう。

年末調整書類と電卓、税理士のイメージ
年末調整業務は税理士への単発依頼が可能

税理士に年末調整だけを依頼することは可能なのか?

顧問契約なしのスポット依頼は一般的に対応可能

結論から言えば、年末調整のみの単発依頼は多くの税理士事務所で受け付けています。顧問契約を結んでいない事業者であっても、年末調整だけのスポット業務として対応してくれる税理士は数多く存在します。特に近年は、クラウド会計ソフトの普及により確定申告を自分で行う個人事業主が増えており、年末調整のみの外注ニーズが高まっているためです。

ただし、全ての税理士事務所が単発依頼を受けているわけではありません。顧問先の業務を優先する事務所や、新規顧問契約を前提とした事務所もあります。年末調整のスポット対応を明示的にサービスメニューとして掲げている事務所を探すことが重要です。

ポイント: 税理士事務所のウェブサイトで「スポット業務」「年末調整代行」「単発依頼歓迎」といった文言があれば、単発依頼に積極的な事務所です。問い合わせ前にサービスメニューをチェックしましょう。

年末調整のみ依頼する事業者の典型的なパターン

税理士に年末調整だけを依頼する事業者には、いくつかの典型的なパターンがあります。

  • 従業員が少数(1〜5名程度)の個人事業主: 自身の確定申告は自分でできるが、従業員の年末調整は複雑で対応が難しい
  • スタートアップ企業や創業間もない法人: コスト削減のため顧問税理士を置かず、必要な業務のみ外注したい
  • 季節労働者を雇用している事業者: 年に一度の年末調整時期のみ従業員を抱える飲食店や農業事業者
  • 税理士変更を検討中の事業者: 現在の顧問税理士から別の税理士への移行期間に単発で依頼
  • 経理担当者が退職した小規模企業: 社内で年末調整を行っていたが、担当者不在により外部委託が必要になった

これらのケースでは、年間を通じた税務顧問サービスは不要でも、年末調整の専門知識と正確な処理が必要となるため、税理士への単発依頼が合理的な選択肢となります。

従業員数別の年末調整依頼パターン図
事業規模や状況に応じた年末調整の外注ニーズ

年末調整を外注するメリットとデメリット

年末調整を税理士に依頼する際のメリットとデメリットを整理しておきましょう。

メリット デメリット
計算ミス・提出漏れのリスク回避 外注費用がかかる(従業員1名あたり5,000円〜15,000円程度)
最新の税制改正に対応した正確な処理 従業員情報の外部提供が必要(セキュリティ面の配慮が必要)
年末調整業務から解放され本業に集中できる 依頼タイミングによっては受付を断られる場合がある
従業員からの質問対応も任せられる 自社で年末調整の知識が蓄積されない
税務調査時の対応サポートも期待できる 顧問契約がないと優先度が低くなる可能性

特に従業員が5名以上いる事業者では、計算ミスのリスクと業務負担を考えると、外注費用を上回るメリットがあります。一方、従業員が1〜2名の小規模事業者では、自分で年末調整を行うことも十分可能です。

税理士に依頼できる年末調整業務の範囲

基本的な年末調整業務の内容

税理士に年末調整を依頼した場合、以下の業務が基本サービスに含まれます。

  1. 扶養控除等申告書の確認: 従業員から提出された各種申告書の記載内容チェック
  2. 保険料控除申告書の確認: 生命保険料、地震保険料、社会保険料などの控除額計算
  3. 住宅借入金等特別控除申告書の確認: 住宅ローン控除の適用チェックと計算
  4. 年末調整計算: 給与所得控除、各種所得控除を適用した所得税額の再計算
  5. 過不足税額の精算: 源泉徴収済み税額との差額計算(還付・徴収額の確定)
  6. 源泉徴収票の作成: 従業員への交付用および税務署提出用の作成
  7. 法定調書の作成: 給与支払報告書、法定調書合計表などの作成
  8. 税務署・市区町村への提出: 必要書類の電子申告または書面提出
STEP 1: 従業員から各種申告書と証明書類を回収
STEP 2: 回収した書類を税理士に送付(郵送またはデータ送信)
STEP 3: 税理士が年末調整計算と各種書類作成
STEP 4: 源泉徴収票と過不足税額のデータを受領
STEP 5: 従業員への還付・徴収および源泉徴収票交付
年末調整業務の流れ図
税理士に依頼する場合の年末調整業務フロー

オプション業務として追加できるサービス

基本的な年末調整業務に加えて、以下のオプションサービスを提供している税理士事務所もあります。

  • 従業員への説明会開催: 年末調整の書類記入方法を従業員に説明(オンライン・対面)
  • 給与計算代行: 年末調整の過不足税額を反映した12月または1月の給与計算
  • 償却資産申告書の作成: 固定資産税の申告業務(年末調整とセットで依頼可能な場合がある)
  • マイナンバー管理: 従業員のマイナンバー収集・管理・廃棄までの対応
  • 電子申告対応: e-Taxやe-Ltaxを利用した電子申請(別途費用がかかる場合あり)
  • 英語対応: 外国人従業員向けの英語での説明・書類作成サポート

これらのオプションは、基本料金に加えて従業員1名あたり1,000円〜3,000円程度の追加費用がかかることが一般的です。自社で対応可能な部分と外注が必要な部分を明確にして、必要なサービスのみを依頼することでコストを最適化できます。

税理士が対応できない業務・事業者側で準備すべきこと

年末調整を税理士に依頼する場合でも、事業者側で必ず対応しなければならない業務があります。

注意: 以下の業務は事業者側の責任で行う必要があります。税理士に丸投げできると誤解しないよう注意しましょう。
  • 従業員への書類配布と回収: 扶養控除等申告書などの各種申告書を従業員に配布し、記入済み書類と添付書類を期限内に回収する責任は事業者にあります
  • 給与データの提供: 1月〜12月の月次給与支払額、社会保険料控除額などのデータを正確に税理士に提供する必要があります
  • 中途入社者の前職源泉徴収票入手: 年の途中で入社した従業員の前職分の源泉徴収票を入手するのは事業者の役割です
  • 還付・徴収の実務処理: 年末調整による過不足税額を実際に従業員に還付または徴収する給与支払実務は事業者が行います
  • 源泉徴収票の交付: 税理士が作成した源泉徴収票を従業員に配布するのは事業者の責任です

特に、従業員からの書類回収が遅れると税理士側の作業にも遅延が生じます。11月上旬には従業員に書類を配布し、11月末までに回収完了するスケジュール管理が重要です。

▲ 年末調整の基本的な流れと注意点を解説した動画

年末調整を税理士に依頼する際の料金相場

従業員数別の料金体系と相場

年末調整の税理士報酬は、従業員数に応じた従量課金制が一般的です。基本料金+従業員1名あたりの単価という料金体系を採用している事務所が多く見られます。

従業員数 料金相場 1名あたり単価 備考
1〜3名 20,000円〜40,000円 10,000円〜15,000円 最低料金制の場合が多い
4〜10名 40,000円〜80,000円 8,000円〜10,000円 従業員数が増えると単価が下がる傾向
11〜20名 80,000円〜140,000円 6,000円〜8,000円 スケールメリットが出始める
21〜50名 140,000円〜300,000円 5,000円〜7,000円 給与計算も含めた年間契約を勧められることが多い
51名以上 個別見積もり 4,000円〜6,000円 社労士との連携が必要になる場合も

上記は一般的な相場であり、都市部や大手事務所ではこれより高額になることもあります。逆に、オンライン専門の税理士事務所や地方の事務所では、上記より2〜3割程度安い料金設定をしているケースもあります。

従業員数と年末調整費用の関係グラフ
従業員数が増えると1名あたりの単価は下がる傾向

料金に影響する要因と追加費用

年末調整の料金は従業員数だけでなく、以下の要因によっても変動します。

  • 中途入社・退職者の有無: 年の途中で入退社がある場合、前職分の源泉徴収票確認や計算が複雑になり、1名あたり2,000円〜5,000円程度の追加費用が発生することがあります
  • 複数給与の有無: 従業員が他の会社からも給与を受けている場合、乙欄適用となり計算が複雑化します
  • 外国人従業員の有無: 外国人従業員がいる場合、租税条約の適用などで専門的な判断が必要となり、1名あたり5,000円〜10,000円程度の追加費用がかかる場合があります
  • 住宅ローン控除初年度: 住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降の年末調整対応は複雑度が増します
  • 依頼時期の遅延: 12月に入ってからの依頼や、提出書類の不備が多い場合は、「特急料金」として基本料金の20〜50%増しになることがあります
  • 電子申告対応: e-TaxやeLtaxでの電子申告を依頼する場合、別途5,000円〜20,000円の費用がかかることがあります(事務所によっては基本料金に含まれている場合も)
ポイント: 料金見積もりを依頼する際は、従業員数だけでなく、中途入退社の有無、外国人従業員の有無、依頼希望時期などの詳細情報を伝えることで、より正確な見積もりが得られます。

具体的な料金事例:3つのケーススタディ

実際の料金イメージを掴むため、3つのケーススタディを見てみましょう。

ケース1:個人事業主Aさん(従業員2名、初めての依頼)

  • 事業内容: 個人経営の飲食店
  • 従業員: 正社員2名(中途入退社なし、住宅ローン控除なし)
  • 依頼内容: 年末調整計算、源泉徴収票作成、法定調書提出まで
  • 依頼時期: 11月上旬
  • 料金: 基本料金15,000円 + 従業員2名×10,000円 = 35,000円(税別)

Aさんの場合、従業員が少ないため1名あたりの単価は高めですが、最低料金制を採用している事務所を選んだため、合計35,000円で対応してもらえました。確定申告は自分で行っているため、顧問契約は不要と判断し、年末調整のみの単発依頼を選択しています。

ケース2:法人B社(従業員8名、前年も同じ税理士に依頼)

  • 事業内容: ITコンサルティング会社
  • 従業員: 正社員7名+役員1名(うち1名が年の途中で入社、1名が住宅ローン控除2年目)
  • 依頼内容: 年末調整計算、源泉徴収票作成、法定調書提出、電子申告対応
  • 依頼時期: 10月中旬
  • 料金: 基本料金20,000円 + 従業員8名×8,000円 + 中途入社者対応3,000円 + 電子申告費用5,000円 = 92,000円(税別)

B社は前年も同じ税理士に依頼しているため、給与データの提供方法などがスムーズで、基本料金が若干低めに設定されています。ただし、中途入社者が1名いるため、前職分の源泉徴収票確認の追加費用が発生しました。

ケース3:個人事業主Cさん(従業員15名、初めて外部委託)

  • 事業内容: 製造業
  • 従業員: 正社員12名+パート3名(中途入退社3名、外国人1名)
  • 依頼内容: 年末調整計算、源泉徴収票作成、法定調書提出、従業員向け説明会(オンライン)
  • 依頼時期: 11月下旬(やや遅め)
  • 料金: 基本料金30,000円 + 従業員15名×7,000円 + 中途入退社3名×3,000円 + 外国人対応8,000円 + 説明会費用15,000円 + 遅延対応費用10,000円 = 177,000円(税別)

Cさんの場合、従業員数が多いため1名あたりの単価は下がっていますが、複雑な要素が多く、依頼時期も遅めだったため、最終的な料金は比較的高額になりました。ただし、初めての外部委託で従業員への説明も必要だったため、説明会サービスを追加したことで、従業員からの質問対応の手間が大幅に削減できたと評価しています。

年末調整料金の内訳イメージ
基本料金+従業員数+オプションで料金が決まる

年末調整を単発で受けてくれる税理士の探し方

税理士事務所の探し方5つの方法

年末調整のスポット依頼を受けてくれる税理士を探す方法は複数あります。それぞれの特徴を理解して、自社に合った方法を選びましょう。

1. 税理士紹介サービスの活用

税理士紹介サービスは、希望条件を伝えると複数の税理士を紹介してくれる無料サービスです。「年末調整のみの単発依頼」という条件を伝えれば、対応可能な税理士だけを紹介してもらえます。

  • メリット: 複数の税理士を比較検討できる、料金交渉がしやすい、紹介手数料は税理士側が負担するため利用者は無料
  • デメリット: 紹介までに数日〜1週間程度かかる、11月以降は対応可能な税理士が見つかりにくい
  • 向いている人: 初めて税理士に依頼する、複数の見積もりを比較したい、10月までに依頼したい

2. インターネット検索で直接問い合わせ

「地域名 年末調整 税理士」「年末調整 スポット依頼」などのキーワードで検索し、サービス内容を確認して直接問い合わせる方法です。

  • メリット: 税理士事務所のウェブサイトで料金やサービス内容を事前確認できる、即日〜数日で返信がある
  • デメリット: 複数の事務所に個別に問い合わせる手間がかかる、料金相場が分かりにくい
  • 向いている人: 自分で情報収集して比較したい、特定の地域や専門性を重視したい
ポイント: 検索時は「スポット対応」「単発OK」「年末調整のみ」といったキーワードを含むページを探しましょう。顧問契約前提の事務所に問い合わせても断られる可能性があります。

3. クラウド会計ソフトの税理士紹介機能

freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトには、税理士紹介機能が付いていることがあります。会計ソフトのデータをそのまま税理士に渡せるため、連携がスムーズです。

  • メリット: 会計ソフトとの連携がスムーズ、データのやり取りが効率的
  • デメリット: 会計ソフトの利用が前提、紹介される税理士の数が限られる
  • 向いている人: すでにクラウド会計ソフトで給与計算をしている、データ連携を重視したい

4. 知人・同業者からの紹介

同じような規模の事業を営む知人や同業者から、実際に年末調整を依頼している税理士を紹介してもらう方法です。

  • メリット: 実際の対応品質や料金の実績が分かる、信頼できる税理士を見つけやすい
  • デメリット: 紹介してもらえる税理士が限られる、断りにくい
  • 向いている人: 信頼できる知人のネットワークがある、口コミ・実績を重視したい

5. 税理士会の相談窓口

各都道府県の税理士会では、無料相談窓口を設けており、税理士の紹介も行っています。

  • メリット: 公的機関の紹介なので安心感がある、無料で相談できる
  • デメリット: 紹介までに時間がかかる、スポット対応に積極的でない税理士が紹介される可能性もある
  • 向いている人: 公的な紹介を希望する、時間に余裕がある
税理士の探し方の比較図
自社の状況に合わせた税理士の探し方を選ぼう

税理士選びで確認すべき5つのポイント

年末調整を依頼する税理士を選ぶ際は、以下のポイントを必ず確認しましょう。

  1. スポット対応の実績があるか: 「年末調整のみの単発依頼」に慣れている税理士は、必要な情報の収集や連絡がスムーズです。実績件数を確認しましょう。
  2. 料金体系が明確か: ウェブサイトやパンフレットに料金が明示されているか、見積もり時に追加費用の可能性について説明があるかを確認します。
  3. 対応スピードは適切か: 問い合わせメールへの返信速度、電話対応の質などから、年末の繁忙期でも適切に対応してもらえるかを判断します。
  4. 業種の専門性はあるか: 飲食業、建設業、IT業など、自社の業種特有の年末調整事項(複数事業所、日雇労働者、外国人エンジニアなど)に対応できるかを確認します。
  5. コミュニケーション方法: 対面、電話、メール、チャット、ビデオ会議など、どのコミュニケーション手段に対応しているかを確認します。特に地方在住の場合、オンライン完結できるかは重要です。
注意: 料金が極端に安い場合は要注意です。「基本料金は安いが追加費用が多数発生する」「対応が雑で計算ミスがある」といったリスクがあります。相場から大きく外れた料金設定には理由があると考えましょう。

問い合わせ時に伝えるべき情報リスト

税理士に年末調整の見積もりを依頼する際は、以下の情報を整理して伝えると、正確な見積もりが得られます。

  • 従業員数(正社員、パート・アルバイト別)
  • 役員数(役員報酬を支払っている場合)
  • 中途入社・退職者の有無と人数
  • 外国人従業員の有無と人数
  • 住宅ローン控除対象者の有無
  • 複数給与(他社からも給与を受けている従業員)の有無
  • 給与計算方法(手計算、エクセル、給与計算ソフト名)
  • 希望する依頼範囲(年末調整計算のみ、源泉徴収票作成まで、電子申告まで、など)
  • 依頼希望時期(書類提出可能時期)
  • その他特殊事情(廃業予定、事業所が複数ある、など)

これらの情報を事前に整理しておくことで、複数の税理士事務所から見積もりを取る際も効率的に比較できます。また、税理士側も正確な見積もりを出しやすくなり、後から追加費用が発生するリスクも減らせます。

▲ 税理士への依頼時の注意点と準備すべき資料を解説

年末調整を税理士に依頼する際の具体的な流れ

依頼から完了までのスケジュール

年末調整を税理士に依頼する場合の標準的なスケジュールは以下の通りです。早めの準備が成功の鍵となります。

時期 事業者の作業 税理士の作業
9月〜10月上旬 税理士を探し始める、複数事務所に見積もり依頼 見積もり提示、契約内容の説明
10月中旬 税理士と契約締結、準備資料の確認 必要書類リストの提供、従業員配布用資料の準備
11月上旬 従業員へ申告書配布、説明 (必要に応じて)従業員向け説明会の実施
11月中旬〜下旬 従業員から申告書・証明書類を回収
11月末〜12月初旬 回収した書類と給与データを税理士に送付 書類の不備チェック、追加資料の依頼
12月中旬 追加資料の提出、内容確認 年末調整計算、源泉徴収票作成
12月下旬 過不足税額の確認、12月または1月給与での精算準備 計算結果の納品、源泉徴収票の交付
翌年1月上旬 従業員へ源泉徴収票交付、過不足税額の精算
翌年1月末 税務署・市区町村への法定調書提出
ポイント: 10月までに税理士を決定し、11月末までに全ての書類を税理士に渡すことが理想的なスケジュールです。12月に入ってからの依頼は対応不可または割増料金になる可能性が高いです。
年末調整の年間スケジュール表
年末調整を税理士に依頼する場合の理想的なタイムライン

事業者が準備・提出すべき書類一覧

税理士に年末調整を依頼する際、事業者側で準備しなければならない書類は多岐にわたります。書類の不備や提出遅延が最も多いトラブル原因ですので、チェックリストを作成して管理しましょう。

従業員から回収する書類

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書: 全従業員から必須(翌年分も同時に回収)
  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書: 年収850万円超の従業員や配偶者控除を受ける従業員から回収
  • 給与所得者の保険料控除申告書: 生命保険料控除、地震保険料控除を受ける従業員から回収
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書: 住宅ローン控除を受ける従業員から回収(2年目以降)
  • 各種保険料控除証明書: 生命保険会社、損害保険会社から郵送される証明書の原本
  • 住宅ローン年末残高証明書: 金融機関から郵送される証明書
  • 国民年金保険料控除証明書: 日本年金機構から郵送される証明書(社会保険未加入の従業員)
  • 国民健康保険料の支払額証明書: 市区町村から入手(社会保険未加入の従業員)
  • 小規模企業共済等掛金払込証明書: iDeCoやその他共済に加入している従業員

事業者が税理士に提供する書類・データ

  • 給与台帳または給与明細: 1月〜12月分の全従業員分(支給額、控除額が明記されたもの)
  • 賞与支払額データ: 年間の賞与支払額と源泉徴収税額
  • 社会保険料控除額: 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の月別控除額
  • 中途入社者の前職源泉徴収票: 年の途中で入社した従業員の前職分(原本)
  • 中途退職者の情報: 退職日、退職時までの給与・賞与総額、源泉徴収税額
  • 従業員の基本情報: 氏名、住所、生年月日、マイナンバー(税理士との契約内容により提供方法が異なる)
注意: マイナンバーの取り扱いには特に注意が必要です。税理士に提供する際は、セキュリティ対策が適切に行われているかを確認しましょう。多くの税理士事務所では、暗号化されたオンラインシステムでの提供を求めています。

よくあるトラブルと対策

年末調整を税理士に依頼する際によく発生するトラブルと、その対策を紹介します。

トラブル1:従業員からの書類回収が遅れる

対策: 11月初旬に配布し、11月20日を社内締切とする。遅延者には個別にリマインドメールを送る。税理士への提出は11月末を目標にする。

トラブル2:保険料控除証明書などの添付書類が不足している

対策: 書類回収時にチェックリストを用い、その場で確認する。不足書類がある場合は従業員に即座に連絡し、再提出期限を明確にする。

トラブル3:中途入社者の前職源泉徴収票が入手できない

対策: 入社時点で前職の源泉徴収票提出を義務付け、11月の年末調整前に再度確認する。前職に連絡しても入手できない場合は、税理士に相談して対応方法を決める。

トラブル4:給与データの集計ミスや漏れがある

対策: 税理士に提出する前に、給与総額と源泉徴収税額の合計が合っているかを自社で確認する。給与計算ソフトを使っている場合は、集計機能を活用する。

トラブル5:税理士からの質問や追加資料依頼への対応が遅れる

対策: 税理士からの連絡には24時間以内に返信すると決めておく。12月は繁忙期なので、対応が遅れると年末調整完了が遅延するリスクがある。

年末調整で起きやすいトラブルと対策フローチャート
事前の対策でトラブルの大半は回避できる

税理士への依頼と自分で行う場合の比較

年末調整を自分で行う場合の作業量とリスク

従業員数が少ない場合、「自分で年末調整をやれば外注費用が節約できる」と考える事業者も多いでしょう。実際、従業員が1〜2名程度であれば、自分で年末調整を行うことは十分可能です。

自分で行う場合の作業時間の目安

  • 従業員1名: 初回3〜5時間、2回目以降2〜3時間
  • 従業員3名: 初回8〜12時間、2回目以降5〜8時間
  • 従業員5名: 初回15〜20時間、2回目以降10〜15時間
  • 従業員10名: 初回30〜40時間、2回目以降20〜30時間

初回は税務署への書類入手、計算方法の理解、電子申告の準備などに時間がかかります。2回目以降は慣れによって作業時間が短縮されますが、それでも相応の時間が必要です。

自分で行う場合のリスク

  • 計算ミスのリスク: 所得税額の計算ミスにより、従業員への還付・徴収額が誤る。税務調査で指摘される可能性もある。
  • 期限遅延のリスク: 法定調書の提出期限(翌年1月31日)に遅れると、罰則の対象になる可能性がある。
  • 税制改正への対応漏れ: 毎年のように税制改正があるため、最新情報をキャッチアップできないと誤った計算になる。
  • 書類の不備: 源泉徴収票や法定調書の記載漏れ・記載誤りがあると、税務署から指摘を受ける。
  • 従業員からの質問対応: 年末調整の仕組みや控除額について従業員から質問されたとき、正確に回答できないと不信感を持たれる。
ポイント: 自分の時給を仮に3,000円として、従業員5名の年末調整に15時間かかるとすれば、人件費換算で45,000円です。税理士への外注費用と比較して、どちらが合理的か判断しましょう。

外注するかの判断基準:従業員数別の推奨

従業員数と事業者の税務知識レベルに応じて、年末調整を自分で行うか外注するかの判断基準は以下の通りです。

従業員数 自分で実施 税理士へ外注 推奨
1〜2名 作業時間:3〜5時間
費用:0円(自分の時間のみ)
作業時間:書類準備2時間程度
費用:20,000〜35,000円
自分で実施(税務知識がある場合)
初めてなら外注も検討
3〜5名 作業時間:10〜15時間
費用:0円(自分の時間のみ)
作業時間:書類準備3〜4時間
費用:40,000〜65,000円