個人事業税の計算方法と業種別税率|いつから課税?非課税業種一覧


# 個人事業税の計算方法と業種別税率|いつから課税?非課税業種一覧

個人事業主やフリーランスとして開業したものの、「個人事業税」という聞き慣れない税金の納付書が突然届いて驚いた、という経験はありませんか?所得税や住民税は知っていても、個人事業税については確定申告時に意識していなかった方も多いのではないでしょうか。

個人事業税は、事業を営む個人が都道府県に納める地方税で、業種によって税率が3%~5%と異なり、さらに非課税業種も存在します。年間290万円の事業主控除があるため、事業所得が一定額以下の方は課税対象外となりますが、売上が増えてくると必ず納税義務が発生します。

この記事では、個人事業税の正確な計算方法、業種別の税率一覧、非課税業種の判定基準、いつから課税されるのか、そして節税のポイントまで、実務に必要な知識を網羅的に解説します。具体的な計算例やケーススタディも交えながら、初めての方でも理解できるよう丁寧に説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。

会計屋.comでは、個人事業主の皆さまが税務で困らないよう、正確で実践的な情報をお届けしています。個人事業税の理解を深めて、適切な納税計画を立てていきましょう。

個人事業税の納付書と計算書類のイメージ
個人事業税は都道府県から納付書が送られてきます

個人事業税とは?基礎知識を押さえよう

個人事業税の定義と課税根拠

個人事業税とは、個人が営む事業に対して課税される地方税(都道府県税)です。法的根拠は地方税法第72条に定められており、「事業を行う個人は、事業所得に対して個人事業税を納める義務がある」と規定されています。

この税金の趣旨は、事業を営むことによって道路や公共施設などの行政サービスを利用する対価として、受益者負担の原則に基づいて課税するというものです。所得税が国税であるのに対し、個人事業税は地方税であり、納付先は事業を行っている都道府県となります。

ポイント: 個人事業税は確定申告とは別に都道府県が計算して納付書を送付します。確定申告をきちんと行っていれば、別途申告書を提出する必要はありません。

所得税・住民税との違い

個人事業主が納める主な税金には、所得税(国税)、住民税(市区町村税)、個人事業税(都道府県税)の3種類があります。それぞれの違いを理解しておくことが重要です。

税金の種類 課税主体 課税対象 計算基準 特徴
所得税 全ての所得 課税所得×税率(5%~45%) 累進課税、各種控除あり
住民税 市区町村・都道府県 全ての所得 課税所得×約10%+均等割 ほぼ一律税率、前年所得に課税
個人事業税 都道府県 事業所得のみ (事業所得-290万円)×税率(3%~5%) 業種別税率、非課税業種あり

最も大きな違いは、個人事業税は事業所得のみが課税対象であり、給与所得や不動産所得などは対象外という点です。また、青色申告特別控除(65万円や55万円)は適用されず、代わりに年290万円の事業主控除が適用されます。

個人事業税の納税義務者

個人事業税の納税義務があるのは、以下の条件を満たす個人事業主です。

  • 法定業種(第1種~第3種事業)のいずれかを営んでいる
  • 事業所得が年間290万円を超える(事業主控除後に課税所得が残る)
  • 都道府県内に事業所または事務所を設けている

注意すべきは、副業として事業を行っている会社員でも、上記の条件を満たせば個人事業税の納税義務が発生する点です。開業届の有無は関係なく、実態として事業を営んでいれば課税対象となります。

個人事業税の納税義務者の判定フローチャート
納税義務の判定は業種と所得金額で決まります

個人事業税の計算方法|基本の計算式

個人事業税の計算式

個人事業税の基本的な計算式は以下の通りです。

計算式:
個人事業税額 = (事業所得 + 青色申告特別控除額 – 各種控除 – 事業主控除290万円)× 税率

この計算式を構成する各要素を詳しく見ていきましょう。

課税所得の算出方法

個人事業税の課税所得は、所得税の事業所得とは異なる計算方法を用います。具体的には以下の手順で計算します。

STEP 1: 確定申告書の事業所得を基準とする
まずは所得税の確定申告で計算した事業所得を出発点とします。
STEP 2: 青色申告特別控除を加算する
所得税では控除された青色申告特別控除(65万円、55万円、10万円)を加算します。個人事業税では青色申告特別控除は適用されません。
STEP 3: 個人事業税の各種控除を差し引く
繰越控除や損失の繰越控除など、個人事業税独自の控除を適用します。
STEP 4: 事業主控除290万円を差し引く
全ての事業主に一律で年290万円の控除が適用されます(営業期間が1年未満の場合は月割計算)。

事業主控除290万円の詳細

事業主控除は、個人事業税特有の控除で、全ての納税義務者に一律年間290万円が認められています。これは所得税の基礎控除とは別の控除です。

ただし、営業期間が1年に満たない場合は月割計算となります。計算式は以下の通りです。

  • 営業期間が1年の場合:290万円
  • 営業期間が1年未満の場合:290万円 × 営業月数 ÷ 12ヶ月

例えば、7月1日に開業した場合、その年の営業期間は7月~12月の6ヶ月となるため、事業主控除は「290万円 × 6ヶ月 ÷ 12ヶ月 = 145万円」となります。

注意: 事業主控除290万円は、複数の事業を営んでいても合計で290万円です。事業ごとに290万円が適用されるわけではありません。
個人事業税の計算式を図解したインフォグラフィック
青色申告特別控除を加算し、事業主控除を差し引くのがポイント

青色申告特別控除の取り扱い

個人事業税の計算において、青色申告特別控除の取り扱いは所得税と大きく異なります。

所得税の確定申告では、青色申告特別控除(最大65万円)を差し引いた後の所得が「事業所得」として申告されます。しかし、個人事業税の計算では、この青色申告特別控除は認められないため、控除前の金額に戻す必要があります。

具体的には以下のように計算します。

項目 金額
事業収入 8,000,000円
必要経費 △3,000,000円
青色申告特別控除前の事業所得 5,000,000円
青色申告特別控除 △650,000円
所得税での事業所得(確定申告書の金額) 4,350,000円
個人事業税の計算基礎(青色控除を加算) 5,000,000円
事業主控除 △2,900,000円
個人事業税の課税所得 2,100,000円

このように、所得税の確定申告で控除された青色申告特別控除65万円を加算し、代わりに事業主控除290万円を差し引くのが個人事業税の計算方法です。

▲ 個人事業税の計算方法を動画で詳しく解説

業種別の税率一覧|第1種~第3種事業

法定業種と税率の体系

個人事業税は、地方税法で定められた70の法定業種に対して課税されます。業種は第1種事業、第2種事業、第3種事業の3つに分類され、それぞれ税率が異なります。

事業区分 税率 主な業種数
第1種事業 5% 37業種(物品販売業、製造業など)
第2種事業 4% 3業種(畜産業、水産業、薪炭製造業)
第3種事業 5%(一部3%) 30業種(医業、弁護士業、コンサル業など)

ただし、東京都など一部の都道府県では、第3種事業の一部(あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復など医業に類する事業)について、税率が3%に軽減されています。

第1種事業(税率5%)の詳細

第1種事業は最も業種数が多く、一般的な物販や製造業、建設業などが含まれます。税率は5%です。

業種分類 具体的な業種例
物品販売業 小売業、卸売業、ECサイト運営、せどり業など
製造業 食品製造、印刷業、工業製品製造など
請負業 建設業、土木業、大工業、左官業、塗装業など
飲食店業 レストラン、居酒屋、カフェ、喫茶店、バーなど
運送業・倉庫業 貨物運送、宅配業、倉庫業など
不動産貸付業 アパート・マンション経営(事業的規模)、駐車場業など
出版業・印刷業 出版社、印刷会社、製本業など
写真業 写真館、フォトスタジオなど
電気供給業・席貸業 レンタルスペース、貸会議室、コワーキングスペースなど

第1種事業で特に注意が必要なのは、不動産貸付業です。アパートやマンションの賃貸経営が「事業的規模」と判定された場合、個人事業税の課税対象となります。一般的な判定基準は「5棟10室基準」(戸建て5棟以上、またはアパート・マンション10室以上)です。

第1種事業の業種分類を示したチャート図
第1種事業は最も業種数が多く、税率は5%です

第2種事業(税率4%)の詳細

第2種事業は業種数が少なく、主に一次産業に関連する業種が対象です。税率は4%と他の区分より低く設定されています。

  • 畜産業:牛、豚、鶏などの飼育業
  • 水産業:漁業、養殖業
  • 薪炭製造業:薪や炭の製造業

これらの業種は該当者が限定的ですが、農業や林業とは異なり課税対象となる点に注意が必要です。

第3種事業(税率5%または3%)の詳細

第3種事業は、専門的なサービス業や自由業が中心です。基本的な税率は5%ですが、医業に類する一部の業種は3%に軽減されています。

税率 業種分類 具体的な業種例
5% 医療・保健業 医師、歯科医師、獣医師、薬剤師など
法律・会計業 弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士など
設計・技術業 建築士、測量士、土地家屋調査士、技術士など
不動産鑑定業 不動産鑑定士
デザイン業 グラフィックデザイナー、Webデザイナーなど
コンサルタント業 経営コンサルタント、ITコンサルタントなど
理容・美容業 理容師、美容師、エステティシャンなど
3% 医業に類する事業 あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師
装蹄師業 装蹄師(馬の蹄鉄を打つ専門職)
ポイント: フリーランスのエンジニアやデザイナー、コンサルタントは第3種事業に該当し、税率は5%です。年収500万円で事業主控除後の課税所得が210万円の場合、個人事業税は「210万円 × 5% = 105,000円」となります。

非課税業種一覧|個人事業税がかからない職種

非課税業種とは

個人事業税には「法定業種」という概念があり、地方税法で定められた70業種のみが課税対象です。逆に言えば、法定業種に該当しない事業は、どれだけ所得が高くても個人事業税は課税されません。

これは非常に重要なポイントで、同じフリーランスでも業種によって税負担が大きく変わる要因となります。

課税業種と非課税業種の判定フローチャート
法定業種に該当しなければ個人事業税は非課税です

主な非課税業種リスト

以下の業種は、個人事業税の法定業種に含まれないため、非課税となります。

業種分類 具体的な職種例 備考
文筆業 作家、小説家、ライター、編集者、翻訳家 Webライターも含む
画家・芸術家 画家、彫刻家、書道家、陶芸家、イラストレーター 純粋な創作活動
音楽家 作曲家、演奏家、歌手、音楽プロデューサー 音楽教室は課税対象
俳優・芸能人 俳優、タレント、モデル、声優 個人事務所形態の場合
プロスポーツ選手 プロ野球選手、プロゴルファー、プロボクサーなど 賞金・契約金収入
農業 米作、野菜栽培、果樹栽培など 畜産業・水産業は課税
林業 植林、伐採、木材生産など 薪炭製造業は課税
YouTuber・配信者 動画配信、ライブ配信など 新しい職種で判例少ない
アフィリエイター ブログ・サイトでの広告収入 物販を伴わない場合
投資家 株式投資、FXトレーダー、仮想通貨トレーダー 事業所得でなく雑所得の場合も
不動産投資 小規模な賃貸経営(事業的規模未満) 5棟10室未満の場合
ポイント: Webライターやブロガー、YouTuberなどの職種は、文筆業や芸術家の範疇に入るため、基本的に個人事業税は非課税とされています。ただし、都道府県の判断により異なる場合があるため、納付書が届いた場合は都道府県税事務所に確認しましょう。

判定が難しいケース

実務では、課税・非課税の判定が難しいケースが多々あります。以下のような境界線上の職種には注意が必要です。

Webデザイナーとイラストレーター

Webデザイナーは「デザイン業」として第3種事業(税率5%)に該当し、課税対象です。一方、イラストレーターは「画家・芸術家」として非課税とされるケースが多いですが、企業からの受注制作が中心の場合は「デザイン業」と判定される可能性もあります。

システムエンジニアとプログラマー

システムエンジニアやプログラマーは、一般的に「コンサルタント業」または「請負業」として第3種事業(税率5%)に該当します。ただし、純粋なソフトウェア開発のみを行う場合は、都道府県によって判断が分かれることがあります。

ブロガー・アフィリエイター

情報発信が主体の場合は「文筆業」として非課税ですが、物販を伴う場合(Amazonアソシエイトなど)は「物品販売業」として課税対象となる可能性があります。実態に応じた判断が必要です。

注意: 業種の判定は最終的に都道府県税事務所が行います。自己判断で「非課税」と思っていても、納付書が届くケースがあります。届いた場合は速やかに納付するか、判定に疑問がある場合は税事務所に問い合わせましょう。

いつから課税される?個人事業税の納税開始時期

課税開始の3つの条件

個人事業税が課税されるには、以下の3つの条件を全て満たす必要があります。

  • 法定業種を営んでいること:70の法定業種のいずれかに該当する
  • 事業所得が年290万円を超えること:事業主控除後に課税所得が残る
  • 継続的に事業を営んでいること:一時的な所得ではなく、反復継続性がある

特に重要なのは2つ目の条件です。年間の事業所得が290万円以下の場合、事業主控除によって課税所得がゼロ以下となるため、個人事業税は発生しません。

開業初年度の課税

開業初年度から個人事業税が課税されるかどうかは、その年の事業所得次第です。

例えば、7月1日に開業した場合、事業主控除は月割計算となります。

計算例(7月開業の場合):
営業期間:7月~12月(6ヶ月)
事業主控除:290万円 × 6ヶ月 ÷ 12ヶ月 = 145万円

事業所得が200万円の場合:
課税所得 = 200万円 – 145万円 = 55万円
個人事業税(税率5%)= 55万円 × 5% = 27,500円

このように、開業初年度でも事業所得が事業主控除を上回れば、個人事業税が課税されます。

開業年度の事業主控除の月割計算表
開業月によって事業主控除額が変わります

納税通知が届くタイミング

個人事業税の納税通知書は、通常8月頃に都道府県税事務所から送付されます。これは前年の確定申告に基づいて計算されたものです。

具体的なスケジュールは以下の通りです。

時期 内容
2023年1月~12月 事業活動を行う
2024年3月15日まで 2023年分の確定申告を提出
2024年6月頃 住民税の納税通知書が届く
2024年8月頃 個人事業税の納税通知書が届く
2024年8月末 第1期分の納付期限
2024年11月末 第2期分の納付期限

なお、納税額が1万円以下の場合は、8月の第1期のみで全額納付となります。

ポイント: 個人事業税は都道府県が計算して通知してくれるため、自分で申告書を作成・提出する必要はありません。確定申告をきちんと行っていれば、課税対象の場合は自動的に納付書が届きます。

個人事業税の具体的な計算例|年収別シミュレーション

ケーススタディ1:フリーランスエンジニアAさん(年収500万円)

まずは、フリーランスのシステムエンジニアAさんのケースを見てみましょう。

基本情報
・業種:システムエンジニア(第3種事業、税率5%)
・年間売上:800万円
・必要経費:300万円
・青色申告特別控除:65万円を適用
・営業期間:1年間(12ヶ月)

STEP 1:所得税の事業所得を計算

年間売上 8,000,000円
必要経費 △3,000,000円
青色申告特別控除 △650,000円
所得税の事業所得(確定申告書の金額) 4,350,000円

STEP 2:個人事業税の課税所得を計算

所得税の事業所得 4,350,000円
青色申告特別控除(加算) +650,000円
事業主控除 △2,900,000円
個人事業税の課税所得 2,100,000円

STEP 3:個人事業税額を計算

課税所得2,100,000円 × 税率5% = 105,000円

Aさんの個人事業税は年間105,000円となり、8月に第1期分52,500円、11月に第2期分52,500円を納付することになります。

フリーランスエンジニアの個人事業税計算シミュレーション表
年収500万円のエンジニアの場合、個人事業税は約10万円

ケーススタディ2:Webデザイナー Bさん(年収350万円)

基本情報
・業種:Webデザイナー(第3種事業、税率5%)
・年間売上:550万円
・必要経費:200万円
・青色申告特別控除:65万円を適用
・営業期間:1年間(12ヶ月)

所得税の事業所得

550万円 – 200万円 – 65万円 = 285万円

個人事業税の課税所得

285万円 + 65万円(青色控除加算)- 290万円(事業主控除)= 60万円

個人事業税額

60万円 × 5% = 30,000円

Bさんの場合、個人事業税は年間30,000円となります。1万円を超えているため、8月に第1期分15,000円、11月に第2期分15,000円を納付します。

ケーススタディ3:飲食店経営 Cさん(年収800万円)

基本情報
・業種:飲食店業(第1種事業、税率5%)
・年間売上:2,000万円
・必要経費:1,200万円
・青色申告特別控除:65万円を適用
・営業期間:1年間(12ヶ月)

所得税の事業所得

2,000万円 – 1,200万円 – 65万円 = 735万円

個人事業税の課税所得

735万円 + 65万円 – 290万円 = 510万円

個人事業税額

510万円 × 5% = 255,000円

Cさんの場合、個人事業税は年間255,000円となり、8月に第1期分127,500円、11月に第2期分127,500円を納付します。

▲ 年収別の個人事業税シミュレーションを動画で詳しく解説

個人事業税の納付方法と期限

納付書の見方と基本情報

個人事業税の納付書は、都道府県税事務所から8月頃に郵送されてきます。納付書には以下の情報が記載されています。

  • 納税義務者情報:氏名、住所、納税者番号
  • 課税年度:前年分の所得に対する課税
  • 業種区分:第1種、第2種、第3種の区分
  • 税率:3%、4%、5%のいずれか
  • 課税標準額:個人事業税の課税所得
  • 税額:年税額と期別税額
  • 納付期限:第1期と第2期の納付期限
個人事業税納付書のサンプルと各項目の説明
納付書には業種区分や税率、課税所得が記載されています

納付期限と分割納付

個人事業税は、原則として年2回に分けて納付します。

納付区分