# 個人事業主から法人化後も使える会計ソフト|データ引き継ぎと法人プラン比較
個人事業主として事業が軌道に乗り、いよいよ法人化を検討しているものの、「今使っている会計ソフトのデータはどうなるの?」「法人化後も同じソフトを使い続けられる?」と不安を感じていませんか。法人成りに伴う会計の移行は、税務申告や経理業務の継続性に直結する重要な問題です。
実は、主要な会計ソフトの多くは個人事業主向けプランから法人向けプランへのスムーズなデータ移行機能を備えており、適切に選べば法人化後も継続して使用できます。本記事では、freee・マネーフォワード・弥生会計など主要ソフトのデータ引き継ぎ方法、法人プランの料金比較、そして法人化時の会計処理の注意点まで、実務経験に基づいて徹底解説します。
法人化を控えた個人事業主の方が、会計ソフト選びで失敗しないための完全ガイドとしてご活用ください。この記事を読めば、法人成り後もスムーズに経理業務を継続でき、税理士との連携もスムーズに進められるようになります。
法人化時に会計ソフトを継続利用すべき3つの理由
個人事業主から法人成りする際、会計ソフトを新しく変更するか、それとも現在使用しているソフトの法人版に移行するかは重要な選択です。結論から言えば、現在使用している会計ソフトの法人版への移行が最も効率的です。
過去データの継続性が業務効率を大きく左右する
法人化後も、個人事業主時代の取引先情報・商品マスタ・勘定科目設定などを引き継げることは大きなメリットです。特に以下のデータは継続利用できると業務効率が格段に向上します。
- 取引先マスタ:得意先・仕入先の情報を再登録する手間が省ける
- 商品・サービスマスタ:販売商品や提供サービスの設定を引き継げる
- 勘定科目設定:自社独自のカスタマイズを維持できる
- 過去の取引履歴:年度比較や経営分析に活用できる
- 銀行口座・クレジットカード連携:再設定の手間が最小限になる
操作習熟度を維持できるメリット
会計ソフトの操作に慣れるまでには一定の時間がかかります。法人化という大きな変化の時期に、会計ソフトまで新しいものに切り替えると、以下のようなリスクが発生します。
- 新しい操作方法の習得に時間がかかる
- 法人化直後の忙しい時期に経理業務が滞る
- 入力ミスや設定ミスが発生しやすくなる
- スタッフを雇用する場合、教育コストが二重にかかる
同じソフトウェアメーカーの法人版に移行すれば、操作画面や入力フローがほぼ同じなため、スムーズに業務を継続できます。
税理士との連携がスムーズになる
法人化を機に税理士と顧問契約を結ぶケースが多いですが、税理士事務所でも主要な会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生会計など)には対応しています。個人事業主時代から使っているソフトを継続すれば、以下のメリットがあります。
| 項目 | 継続利用のメリット | 新規導入のデメリット |
|---|---|---|
| データ共有 | 過去データも含めて税理士と共有可能 | 過去データの参照が困難 |
| アドバイス | 個人時代からの経営状況を踏まえた助言 | 法人化後のデータのみでの判断 |
| 設定 | 既存の勘定科目や補助科目を活用 | 一から設定を構築 |
| 移行期間 | 最短1週間程度で業務開始 | 1〜2ヶ月の準備期間が必要 |
主要会計ソフトのデータ移行機能を徹底比較
法人化時のデータ移行については、会計ソフトごとに対応状況が異なります。ここでは主要3社(freee・マネーフォワード・弥生会計)のデータ移行機能を詳しく比較します。
freee会計のデータ移行機能
freee会計は、個人事業主プランから法人プランへのデータ移行機能が最も充実しているソフトの一つです。「事業所の引き継ぎ機能」を使えば、以下のデータを法人版に移行できます。
- 勘定科目・税区分設定
- 取引先情報(得意先・仕入先)
- 品目・メンバー情報
- 銀行口座・クレジットカード連携設定
- 口座の同期ルール・自動登録ルール
- 開始残高(法人設立時点での資産・負債)
STEP 2: 個人事業主版の管理画面から「事業所の引き継ぎ」を選択
STEP 3: 引き継ぐデータを選択(全選択も可能)
STEP 4: 法人用アカウントでデータを確認・編集
マネーフォワード クラウド会計のデータ移行機能
マネーフォワード クラウド会計も、個人事業主向けの「マネーフォワード クラウド確定申告」から法人向けの「マネーフォワード クラウド会計」へのデータ移行に対応しています。
移行可能なデータは以下の通りです。
- 勘定科目設定(独自に追加した科目も含む)
- 取引先マスタ
- 品目マスタ
- 部門設定
- メンバー(従業員)情報
- 金融機関連携設定
- 仕訳ルール(自動仕訳設定)
マネーフォワードの特徴は、仕訳ルール(自動仕訳の設定)も引き継がれる点です。個人事業主時代に設定した「この取引先からの入金は売掛金の回収」といったルールが法人版でもそのまま使えるため、入力効率が維持されます。
弥生会計のデータ移行機能
弥生会計シリーズは、デスクトップ版とクラウド版で移行方法が異なります。
やよいの青色申告→弥生会計(デスクトップ版)の場合
デスクトップ版の場合、「やよいの青色申告」のデータを「弥生会計」用のファイル形式に変換する機能があります。変換時に以下が引き継がれます。
- 勘定科目体系
- 補助科目・部門設定
- 取引先情報
- 前期繰越データ(開始残高として設定)
ただし、弥生会計は法人会計の複式簿記に完全対応した設計のため、個人事業主向けの簡易的な科目設定は法人会計の科目体系に読み替えられます。
やよいの青色申告 オンライン→弥生会計 オンライン(クラウド版)の場合
クラウド版の場合は、個人版から法人版への直接的なデータ移行機能は提供されていません(2024年1月時点)。そのため、以下の手順が必要になります。
- やよいの青色申告 オンラインから必要なマスタをCSVエクスポート
- 弥生会計 オンラインで新規に事業所を作成
- CSVファイルをインポートしてマスタを登録
- 開始残高を手動で入力
| 会計ソフト | 移行のしやすさ | 引き継げる主なデータ | 移行にかかる時間 |
|---|---|---|---|
| freee会計 | ◎ 非常に簡単 | マスタ、設定、ルール | 30分〜1時間 |
| マネーフォワード | ◎ 非常に簡単 | マスタ、設定、仕訳ルール | 30分〜1時間 |
| 弥生会計(デスクトップ) | ○ 変換ツールあり | 勘定科目、補助科目、開始残高 | 1〜2時間 |
| 弥生会計(クラウド) | △ 手動作業が多い | CSVで各マスタを個別移行 | 半日〜1日 |
▲ freee会計での法人成り時のデータ移行手順を動画で解説
法人プラン料金の徹底比較【2024年最新版】
個人事業主向けプランと法人向けプランでは、料金体系が大きく異なります。ここでは主要会計ソフトの法人プラン料金を詳しく比較します。
freee会計 法人プランの料金体系
freee会計の法人向けプランは、事業規模に応じて3つのプランが用意されています(2024年1月時点)。
| プラン名 | 月額料金(年払い) | 主な機能 | おすすめの事業規模 |
|---|---|---|---|
| ミニマム | 2,948円/月 (年額35,760円) |
基本的な会計機能、請求書作成、経費精算 | 売上1,000万円未満の小規模法人 |
| ベーシック | 5,808円/月 (年額69,696円) |
ミニマム機能+請求書の定期発行、各種レポート | 売上1,000万〜5,000万円 |
| おまかせパック | 43,780円/月〜 (年額525,360円〜) |
記帳代行・税務相談・確定申告サポート付き | 経理担当者がいない法人 |
freeeの特徴は、追加ユーザー料金が比較的リーズナブルな点です。ベーシックプランでは3名まで追加費用なしで利用でき、4名目以降は1名あたり月額550円(年払いの場合)で追加できます。
マネーフォワード クラウド会計 法人プランの料金体系
マネーフォワード クラウド会計の法人向けプランも、事業規模に応じた複数のプランが用意されています。
| プラン名 | 月額料金(年払い) | 主な機能 | おすすめの事業規模 |
|---|---|---|---|
| スモールビジネス | 3,278円/月 (年額39,336円) |
会計・請求書・経費・給与の基本機能 | 従業員5名以下の小規模法人 |
| ビジネス | 5,478円/月 (年額65,736円) |
部門管理、経費承認フロー、予算管理 | 従業員6名〜30名程度 |
| IPO準備・中堅企業 | 個別見積もり | 内部統制、ワークフロー、権限管理 | 上場準備企業・中堅企業 |
マネーフォワードの大きな特徴は、クラウドサービス全体がパッケージになっている点です。会計だけでなく、請求書・経費精算・給与計算・勤怠管理などが同じプラン内で使えるため、バックオフィス業務全体を効率化したい場合に適しています。
弥生会計 法人プランの料金体系
弥生会計は、デスクトップ版とクラウド版で料金体系が大きく異なります。
弥生会計(デスクトップ版)
| 製品名 | 購入価格 | サポート年額 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 弥生会計 24 スタンダード | 44,000円(買い切り) | 30,000円 | 小規模法人向け基本機能 |
| 弥生会計 24 プロフェッショナル | 77,000円(買い切り) | 40,000円 | 部門管理・経営分析機能付き |
弥生会計 オンライン(クラウド版)
| プラン名 | 月額料金(年払い) | 主な機能 |
|---|---|---|
| セルフプラン | 2,750円/月 (年額33,000円) |
基本的な会計機能のみ |
| ベーシックプラン | 4,125円/月 (年額49,500円) |
電話・メール・チャットサポート付き |
コストパフォーマンスで選ぶならどのソフト?
5年間の総コストで比較すると、以下のような傾向があります(従業員3名、年間取引数500件程度の小規模法人を想定)。
- 最も低コスト:弥生会計オンライン セルフプラン(5年で165,000円)
- コスパ重視:マネーフォワード スモールビジネス(5年で196,680円)※請求書・経費機能込み
- 使いやすさ重視:freee ミニマム(5年で178,800円)
- 税理士連携重視:弥生会計デスクトップ版(5年で194,000円)※サポート込み
ただし、料金だけで選ぶべきではありません。税理士との相性、使いやすさ、サポート体制、他のバックオフィス業務との連携など、総合的に判断することが重要です。
法人化時の会計処理と注意点
法人成りする際には、会計上・税務上の特有の処理が必要になります。会計ソフトの移行だけでなく、これらの処理も正しく理解しておく必要があります。
個人事業の最終決算と法人の開始仕訳
法人化する場合、個人事業主としての事業は法人設立日の前日で「廃業」扱いとなり、最終決算を行う必要があります。同時に、法人側では開始仕訳(期首残高の設定)が必要です。
個人事業主側で必要な処理
- 廃業届の提出:法人設立から1ヶ月以内に税務署に提出
- 最終年度の確定申告:廃業日までの所得を翌年3月15日までに申告
- 事業用資産・負債の洗い出し:法人に引き継ぐものを明確化
- 消費税の処理:課税事業者の場合、廃業日までの期間で申告
法人側で必要な処理
- 設立登記:法務局での登記手続き
- 開始貸借対照表の作成:個人事業から引き継いだ資産・負債を記載
- 資本金の設定:現金出資または現物出資(事業用資産の引き継ぎ)
- 法人税・消費税の届出:設立から2ヶ月以内に各種届出書を提出
個人事業の最終状況(9月30日廃業)
・事業用預金:300万円
・売掛金:80万円
・パソコン等(帳簿価格):50万円
・買掛金:20万円
・事業主借入金:なし
法人設立(10月1日)での処理
・資本金300万円を現金出資
・個人事業の売掛金80万円を法人が買取(個人→法人への債権譲渡)
・パソコン等は時価50万円で法人に売却
・買掛金20万円も法人が引き継ぎ
この場合、法人の開始貸借対照表は以下のようになります。
資産の部:現金預金 300万円、売掛金 80万円、備品 50万円
負債の部:買掛金 20万円
純資産の部:資本金 300万円、資本準備金 110万円
法人成り時に発生しやすい税務リスク
法人化時には、以下のような税務リスクに注意が必要です。これらは会計ソフトでは自動チェックされないため、税理士に相談することを強くおすすめします。
| リスク項目 | 発生する状況 | 対策 |
|---|---|---|
| 消費税の二重課税 | 個人事業で課税事業者、法人設立時も課税事業者になる場合 | 法人は原則2年間免税。ただし資本金1,000万円以上は初年度から課税 |
| 減価償却資産の引き継ぎミス | 個人の未償却残高と法人の取得価額が不一致 | 時価評価を行い、適正な取得価額で計上 |
| 役員報酬の設定ミス | 事業年度途中で役員報酬を変更 | 定期同額給与のルールを守る。設立3ヶ月以内なら変更可 |
| 売掛金・買掛金の未処理 | 個人事業の債権債務を法人に正式に譲渡していない | 債権譲渡契約書を作成し、取引先に通知 |
| 個人口座の継続使用 | 法人設立後も個人名義の口座で取引 | 必ず法人口座を開設し、取引先に変更を通知 |
個人事業主としての確定申告と法人としての決算申告では、税務の考え方が大きく異なります。法人成りを検討している段階から、税理士に相談することを強くおすすめします。
会計ソフトでの開始残高設定方法
法人設立時の開始残高(期首残高)の設定は、会計ソフトごとに方法が異なります。
freee会計での開始残高設定
- 「設定」→「開始残高の設定」を選択
- 法人設立日を「開始日」として設定
- 各科目の残高を入力(現金、預金、売掛金、買掛金など)
- 資産合計と負債・純資産合計が一致するか確認
- 差額が出る場合は「元入金」または「資本金」で調整
マネーフォワード クラウド会計での開始残高設定
- 「各種設定」→「開始残高の登録」を選択
- 「開始年月日」に法人設立日を入力
- 貸借対照表の各科目に金額を入力
- 「差額を資本金で調整」にチェックを入れると自動計算
- 固定資産については、取得日・取得価額・償却方法も登録
弥生会計での開始残高設定
- 「導入」→「残高試算表」を選択
- 設立年月日を入力
- 「開始残高」タブで各勘定科目の残高を入力
- 固定資産は「固定資産管理」から個別に登録
- 貸借バランスチェックで差額がゼロになることを確認
弥生会計は、個人事業主版の「やよいの青色申告」からデータをコンバートした場合、資産科目の多くが自動的に引き継がれます。ただし、個人事業主の「元入金」は法人の「資本金」に読み替える必要があります。
法人化後も使いやすい会計ソフトの選び方
法人化を見据えて会計ソフトを選ぶ場合、個人事業主時代から将来を見据えた選択が重要です。ここでは、長期的な視点での選び方を解説します。
クラウド型とインストール型、法人にはどちらが向いている?
会計ソフトには、クラウド型(Webブラウザで利用)とインストール型(PC にソフトをインストール)の2種類があります。法人の場合、それぞれにメリット・デメリットがあります。
| 比較項目 | クラウド型(freee・マネーフォワード等) | インストール型(弥生会計デスクトップ等) |
|---|---|---|
| 複数人での利用 | ◎ 同時アクセス可能。権限設定も容易 | △ ネットワーク版が必要(追加費用) |
| 税理士との連携 | ◎ リアルタイムでデータ共有 | ○ データファイルを送付する必要あり |
| 銀行連携・自動仕訳 | ◎ 標準機能で充実 | △ 限定的またはオプション |
| 処理速度 | ○ インターネット環境に依存 | ◎ PCスペック次第で高速 |
| データバックアップ | ◎ 自動バックアップ | △ 手動でバックアップ必要 |
| 税制改正対応 | ◎ 自動アップデート | △ 新バージョン購入が必要な場合も |
| コスト | △ 月額・年額の継続費用 | ○ 初期費用は高いが長期的には安い |
事業規模の成長を見据えた機能比較
法人化後、事業が成長していくと必要になる機能があります。将来を見据えて、以下の機能の有無を確認しておきましょう。
- 部門別管理:複数の事業部門や店舗の損益を個別管理
- プロジェクト別管理:案件ごとの収支を把握(制作会社・コンサル等)
- 予算管理機能:予算と実績の比較分析
- 経費承認ワークフロー:従業員が増えた際の経費精算フロー
- 電子帳簿保存法対応:2024年1月から本格施行される電子取引データ保存義務に対応
- インボイス制度対応:適格請求書の発行・保存機能
- API連携:販売管理システムや在庫管理システムとのデータ連携
税理士の対応ソフトを事前に確認する
法人化後は、多くの企業が税理士と顧問契約を結びます。税理士事務所によって、得意とする会計ソフトや対応可能なソフトが異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
パターン1:税理士側で会計ソフトを指定される場合
税理士事務所が使用しているソフト(多くは弥生会計)に合わせる。データファイルのやり取りがスムーズ。
パターン2:クラウド会計での同時アクセス
freeeやマネーフォワードでアカウント共有。税理士がリアルタイムでチェック・修正可能。
パターン3:自社で入力、税理士が確認・申告
月次決算は自社で行い、決算期のみ税理士に依頼。どのソフトでも対応可能な税理士を選ぶ。
税理士との連携については、法人化前の相談段階で「どの会計ソフトを使うべきか」を相談するのがベストです。税理士によっては、顧問契約とセットで会計ソフトの割引が受けられる場合もあります。
▲ 税理士が教える「法人におすすめの会計ソフト」選び方のポイント
ケーススタディ:実際の法人成り事例から学ぶ
実際に個人事業主から法人化した3つの事例を紹介します。それぞれの業種や規模に応じた会計ソフト選びの参考にしてください。
ケース1:年商3,000万円のフリーランスエンジニア→株式会社化
背景:受託開発を中心に事業展開していたフリーランスエンジニアのBさん(35歳)。年商が3,000万円を超え、消費税の課税事業者にもなったため、節税と信用力向上を目的に法人化を決断。
使用していた会計ソフト:個人事業主時代はfreee会計(スターター)を使用
法人化後の選択:freee会計(ベーシックプラン)に移行
選択理由
- 個人版から法人版へのデータ移行が非常にスムーズだった
- 取引先との請求書発行業務も freee請求書で一元管理できる
- 税理士がfreee認定アドバイザーで、同じソフトを推奨された
- 将来的にエンジニアを雇用する際、経費精算機能が使える
移行にかかった時間:約2時間(マスタデータの引き継ぎと開始残高の設定)
年間コスト:69,696円(ベーシックプラン年払い)+ 税理士顧問料 月3万円
