飲食店オーナーに強い税理士の選び方|開業支援から融資サポートまで


飲食店の経営を始めると、メニュー開発や接客、仕入れ管理だけでなく、確定申告や経理処理、税務対応といった会計業務が大きな負担になります。特に開業したばかりのオーナーは「食材費はどこまで経費にできる?」「消費税の申告はいつから必要?」「融資を受けるための事業計画書はどう書けば?」と悩むことが少なくありません。この記事では、飲食店経営に特有の税務課題を理解し、あなたのビジネスを強力にサポートできる税理士の選び方を徹底解説します。開業支援から日々の記帳代行、融資サポート、さらには節税対策まで、飲食店オーナーが知っておくべき税理士活用術をすべてお伝えします。この記事を読めば、税理士選びで失敗せず、本業の店舗運営に集中できる環境が手に入ります。

飲食店の厨房で経理書類を確認するオーナー
飲食店経営では税務・会計業務も重要な経営課題

飲食店経営で税理士が必要な5つの理由

飲食店は他業種と比較して、税務・会計面で特有の課題が多い業種です。ここでは飲食店オーナーが税理士を活用すべき具体的な理由を解説します。

日々の現金管理と売上計上の複雑性

飲食店は現金商売が中心で、1日に何十件もの取引が発生します。クレジットカード決済、電子マネー、QRコード決済など支払い方法も多様化しており、それぞれの入金タイミングや手数料処理が異なります。POSレジのデータと実際の現金残高を毎日照合し、正確に売上を計上する必要がありますが、営業後の疲労した状態でこれらを完璧に行うのは容易ではありません。

税理士と顧問契約を結べば、POSデータと会計ソフトの連携方法をアドバイスしてもらえ、日々の記帳業務を代行またはチェックしてもらえます。これにより売上の計上漏れや二重計上を防ぎ、税務調査でも指摘されないしっかりとした帳簿を作成できます。

ポイント: 飲食店の税務調査では売上の計上漏れが最も指摘されやすい項目です。現金商売だからこそ、日々の正確な記帳が信頼性の証明になります。

食材費・人件費など経費処理の専門性

飲食店の経費は多岐にわたります。食材仕入れ、調味料、消耗品、水道光熱費、家賃、従業員給与、広告宣伝費など、それぞれ勘定科目が異なります。特に食材は日々仕入れて消費するため、在庫管理と原価計算が重要になります。月末の棚卸を正確に行わないと、利益が正しく計算できません。

また、オーナー自身の食事代や家族の食事代は経費にできるのか、開業前の試作品購入費はどう処理するのか、店舗兼自宅の場合の家事按分はどうするのかなど、判断が難しいケースが多数あります。税理士は飲食業特有の経費処理に精通しており、適切な勘定科目と按分方法をアドバイスしてくれます。

従業員雇用に伴う給与計算・社会保険手続き

飲食店では正社員だけでなく、アルバイトやパートなど多様な雇用形態のスタッフを雇用することが一般的です。給与計算では源泉徴収税額や雇用保険料、社会保険料の計算が必要で、扶養家族の人数や通勤手当の有無によって税額が変わります。

さらに年末調整、労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届など、年間を通じて様々な手続きが発生します。税理士(または提携社労士)に依頼すれば、これらの煩雑な給与計算・労務手続きを代行してもらえ、法令違反のリスクも回避できます。

給与計算ソフトの画面イメージ
給与計算は源泉徴収や保険料計算など専門知識が必要

開業時の融資申請・事業計画書作成サポート

飲食店開業には店舗の内装工事費、厨房機器購入費、初期仕入れ費用など、まとまった資金が必要です。日本政策金融公庫の創業融資や自治体の制度融資を活用するケースが多いですが、融資審査では事業計画書の質が合否を大きく左右します。

税理士は数多くの開業支援実績があり、金融機関が求める事業計画書のポイントを熟知しています。売上予測の根拠、原価率や人件費率の設定、返済計画の妥当性など、説得力のある数字を一緒に作り上げてくれます。また、税理士が作成に関与した事業計画書は金融機関からの信頼度も高く、融資成功率の向上につながります。

成功事例: 東京都内でイタリアンレストランを開業したAさんは、税理士のサポートで日本政策金融公庫から1,200万円の創業融資を獲得。詳細な売上予測と原価管理計画が評価されました。

消費税・インボイス制度への対応

2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始され、飲食店にも大きな影響が出ています。年間売上1,000万円以下の免税事業者だった小規模飲食店も、取引先(法人向けケータリングやテイクアウト業者など)から求められてインボイス登録(課税事業者化)を検討するケースが増えています。

インボイス登録すると消費税の申告義務が発生し、仕入税額控除の計算や適格請求書の保存など新たな事務負担が生じます。税理士に相談すれば、自店の売上構成を分析して登録すべきか否かを判断でき、登録後の消費税申告もスムーズに対応できます。

飲食店経営に関する確定申告の基礎知識は【2024年版】個人事業主の確定申告やり方完全ガイド|初めてでも安心の手順で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

飲食店に強い税理士の特徴と見極めポイント

税理士ならどこでも同じというわけではありません。飲食店特有の課題に対応できる税理士を選ぶための具体的なポイントを解説します。

飲食業の実務経験・顧問実績が豊富

飲食業は他業種と異なる特性が多いため、飲食店の顧問実績が豊富な税理士を選ぶことが重要です。税理士事務所のホームページで「対応業種」や「顧問先実績」を確認し、居酒屋、カフェ、レストラン、焼肉店など具体的な業態名が挙げられているかチェックしましょう。

また、面談時に「これまで何軒の飲食店を担当されましたか?」「私の業態(和食、イタリアン等)の顧問経験はありますか?」と直接質問することも有効です。実績豊富な税理士なら、同業他店の平均原価率やFL比率(Food cost+Labor costの売上比率)などの業界データも教えてくれるため、自店の経営状況を客観的に評価できます。

POSレジ・会計ソフト連携に詳しい

現代の飲食店経営では、POSレジシステムと会計ソフトの連携が業務効率化の鍵です。Airレジ、スマレジ、ユビレジ、Square POSなど主要なPOSレジと、freee、マネーフォワード、弥生会計などの会計ソフトを自動連携できれば、売上データの手入力が不要になり、記帳ミスも激減します。

税理士を選ぶ際は、「どのPOSレジと会計ソフトの組み合わせに対応していますか?」「データ連携の設定サポートはしてもらえますか?」と確認しましょう。IT活用に積極的な税理士なら、初期設定から月次の確認まで丁寧にサポートしてくれます。

POSレジと会計ソフトの連携イメージ図
POSレジと会計ソフトの連携で記帳業務を大幅に効率化

▲ 飲食店向けPOSレジと会計ソフト連携の解説動画

開業支援・融資サポートの実績

これから開業する方、または開業後間もない方は、開業支援に強い税理士を選びましょう。具体的には以下のサービスを提供しているかを確認します。

  • 事業計画書の作成支援(売上予測、損益計画、資金繰り表)
  • 日本政策金融公庫や制度融資の申請サポート
  • 金融機関への同行・面談同席
  • 開業届・青色申告承認申請書の提出代行
  • 法人化のタイミングアドバイス
  • 各種許認可(飲食店営業許可、防火管理者など)の相談窓口紹介

開業支援実績が豊富な税理士は、金融機関の担当者とのパイプも太く、融資審査で重視されるポイントを熟知しています。「これまで何件の飲食店開業を支援しましたか?」「融資成功率はどのくらいですか?」と質問してみましょう。

税務調査対応の経験値

飲食店は現金取引が多いため、税務調査の対象になりやすい業種です。実際に調査が入った場合、税理士の対応力が結果を大きく左右します。税務調査経験が豊富な税理士なら、日頃から調査に耐えうる帳簿作成を指導してくれますし、調査当日も立ち会って適切な説明をしてくれます。

面談時に「税務調査の立会経験はどのくらいありますか?」「飲食店の調査ではどんな点が指摘されやすいですか?」と聞いてみましょう。具体的なエピソードを話してくれる税理士は信頼できます。

注意: 税務調査では現金売上の計上漏れ、従業員への賄い食事の処理、交際費と会議費の区分などが重点的にチェックされます。日頃から適切な処理をしておくことが重要です。

訪問頻度とコミュニケーション方法

飲食店は営業時間が夜中心のため、一般的な税理士事務所の営業時間(平日9時〜17時)とずれることがあります。税理士との面談は月に何回、どの時間帯に、どこで行うのかを事前に確認しましょう。

訪問型の場合、税理士が店舗に来てくれるのか、こちらが事務所に行くのかも重要です。最近はZoomなどのオンライン面談に対応する税理士も増えており、忙しいオーナーにとっては便利です。また、日常的な質問はチャットツール(ChatworkやSlackなど)で気軽に相談できる体制があると理想的です。

飲食店の税理士費用相場と料金体系

税理士への報酬は事務所によって異なりますが、飲食店の場合の一般的な費用相場と料金体系を解説します。

個人事業主の場合の顧問料相場

個人事業として飲食店を経営している場合の顧問料は、年間売上高や訪問頻度によって変わります。一般的な相場は以下の通りです。

年間売上高 月額顧問料 決算・確定申告料 年間合計目安
1,000万円未満 1.5〜2.5万円 8〜12万円 26〜42万円
1,000〜3,000万円 2.5〜3.5万円 12〜18万円 42〜60万円
3,000〜5,000万円 3.5〜5万円 18〜25万円 60〜85万円
5,000万円以上 5万円〜 25万円〜 85万円〜

この料金には通常、月次の記帳代行や経営相談、年末調整(従業員数に応じて追加料金の場合あり)が含まれます。ただし、給与計算や税務調査立会は別料金のケースが多いです。

税理士費用の内訳を示すグラフ
税理士費用は売上規模とサービス内容で決まる

法人の場合の顧問料相場

株式会社や合同会社として飲食店を経営している場合、個人事業主よりやや高めの料金設定になります。法人は決算申告が複雑で、法人税・地方法人税・事業税・住民税など複数の税目を申告する必要があるためです。

年間売上高 月額顧問料 決算申告料 年間合計目安
1,000万円未満 2.5〜3.5万円 15〜20万円 45〜62万円
1,000〜3,000万円 3.5〜5万円 20〜30万円 62〜90万円
3,000〜5,000万円 5〜7万円 30〜40万円 90〜124万円
5,000万円以上 7万円〜 40万円〜 124万円〜

スポット契約(開業支援・融資サポートのみ)の費用

「まだ開業前で顧問契約は早いが、融資申請だけサポートしてほしい」というニーズに応えるスポット契約も可能です。一般的な費用は以下の通りです。

  • 事業計画書作成支援:5〜15万円
  • 融資申請書類作成・金融機関同行:10〜20万円
  • 開業届等の各種届出書作成・提出代行:3〜5万円
  • 法人設立支援(司法書士との連携):10〜30万円

開業後に顧問契約を結ぶ場合、スポット料金を割引または顧問料に充当してくれる事務所もあります。

追加料金が発生するケース

基本の顧問料・決算料以外に、以下のような場合に追加料金が発生することがあります。

  • 給与計算代行:従業員1人あたり月1,000〜2,000円
  • 年末調整:従業員1人あたり5,000〜10,000円
  • 税務調査立会:1日あたり5〜10万円
  • 消費税申告(課税事業者の場合):3〜10万円
  • 償却資産税申告:1〜3万円
  • 記帳代行(仕訳件数が多い場合):100仕訳あたり2,000〜5,000円

契約前に見積書で「何が含まれ、何が追加料金か」を明確にしてもらいましょう。

ポイント: 税理士費用は経費(支払手数料または顧問料)として全額計上できます。適切な税務処理による節税効果を考えれば、費用対効果は十分に見込めます。

開業時に税理士がサポートしてくれる具体的な内容

飲食店開業時には多くの手続きと準備が必要です。税理士がどのようにサポートしてくれるのか、具体的に見ていきましょう。

事業計画書の作成と数値の妥当性チェック

融資申請に欠かせない事業計画書には、売上予測、原価計算、人件費計画、設備投資計画、返済シミュレーションなどを記載します。税理士は過去の顧問先データや業界統計をもとに、以下の点をチェック・アドバイスしてくれます。

  • 客単価と来客数の設定が現実的か(立地、席数、営業時間から逆算)
  • 原価率(Food cost率)が業態に適しているか(一般的に30〜35%が目安)
  • 人件費率が適正か(FL比率で60%以内が理想)
  • 家賃負担率が過大でないか(売上の10%以内が目安)
  • 初期投資額と自己資金のバランスは適切か
  • 返済計画が資金繰りを圧迫しないか

これらの数字に説得力があると、金融機関からの評価が高まり、融資審査が通りやすくなります。

飲食店の事業計画書サンプル
説得力のある数字を盛り込んだ事業計画書が融資成功の鍵

日本政策金融公庫・制度融資の申請サポート

飲食店の開業資金調達では、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や各自治体の制度融資がよく利用されます。税理士は以下のサポートを提供します。

  • 申請書類(借入申込書、創業計画書など)の作成代行
  • 必要な添付書類(見積書、契約書、資格証明書など)のリストアップ
  • 面談想定質問のシミュレーション
  • 金融機関担当者との面談への同席
  • 追加資料請求への対応

特に面談同席は心強く、専門家が隣にいることで自信を持って説明できます。また、税理士が同席することで金融機関側も「この事業は専門家がサポートしている」と安心感を持ちます。

個人事業主か法人化かの判断アドバイス

飲食店を始める際、個人事業主として開業するか、最初から法人(株式会社または合同会社)を設立するかは重要な選択です。税理士は以下の観点からアドバイスしてくれます。

項目 個人事業主 法人
設立費用 開業届の提出のみ(無料) 株式会社約25万円、合同会社約10万円
税率 所得税(累進課税5〜45%)+住民税10% 法人税(15〜23.2%)+地方税
社会的信用 低い 高い(法人向け取引で有利)
経費の範囲 事業に直接関係するもののみ 役員報酬、退職金など幅広い
赤字の繰越 青色申告で3年 10年
事務負担 比較的軽い 重い(決算公告、役員変更登記など)

一般的に、年間利益が500〜800万円を超える見込みなら法人化した方が節税メリットが大きくなります。税理士は将来の売上予測と税負担をシミュレーションして、最適な形態を提案してくれます。

開業届・青色申告承認申請などの届出サポート

個人事業主として開業する場合、以下の届出書を税務署・都道府県税事務所に提出する必要があります。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書(開業から1ヶ月以内)
  • 所得税の青色申告承認申請書(開業から2ヶ月以内、または承認を受けようとする年の3月15日まで)
  • 青色事業専従者給与に関する届出書(家族を従業員にする場合)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(従業員を雇う場合、開設から1ヶ月以内)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(従業員10人未満の場合に源泉税を年2回納付にできる)

税理士はこれらの書類を正確に作成し、期限内に提出してくれます。特に青色申告承認申請は期限厳守で、遅れると初年度は白色申告になってしまい、65万円の特別控除が受けられなくなります。

青色申告について詳しくは青色申告65万円控除の要件とは?2024年最新版|e-Tax必須化の注意点をご覧ください。

STEP 1: 開業日の決定と事業内容の確定
STEP 2: 税理士との面談と契約(開業前推奨)
STEP 3: 事業計画書の作成と融資申請
STEP 4: 各種届出書の作成・提出(税理士が代行)
STEP 5: 会計ソフト・POSレジの導入設定
STEP 6: 開業後の記帳開始と月次面談スタート

許認可申請の相談窓口紹介

飲食店営業には保健所の「飲食店営業許可」が必須で、深夜にアルコールを提供する場合は「深夜酒類提供飲食店営業開始届」、30人以上収容する店舗では「防火管理者選任届」なども必要です。

税理士自身はこれらの許認可申請を代行できませんが、提携している行政書士や社労士を紹介してくれます。ワンストップで開業準備を進められるため、時間と手間が大幅に削減できます。

日常業務における税理士の活用方法

開業後も税理士は様々な場面で力になります。日常業務でどのように税理士を活用できるか見ていきましょう。

月次顧問で経営状況を数字で把握

税理士と月次顧問契約を結ぶと、毎月または隔月で試算表(月次決算書)を作成してもらえます。試算表には損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)が含まれ、以下の情報が分かります。

  • 月間売上高と前年同月比較
  • 原価率・人件費率・家賃負担率などの経営指標
  • 営業利益・経常利益の推移
  • 現預金残高と資金繰り状況
  • 借入金残高と返済予定

この数字をもとに税理士と面談することで、「先月は原価率が上がっているが、仕入れ先を見直した方がいいか」「人件費が売上の40%を超えているので、シフト調整が必要」といった具体的な経営改善策を考えられます。

月次試算表のサンプル画面
月次試算表で経営状況を「見える化」

記帳代行で本業に集中できる環境づくり

毎日のレシート整理や会計ソフトへの入力作業は時間がかかります。税理士に記帳代行を依頼すれば、領収書やレシートをまとめて渡すだけで、仕訳入力から帳簿作成まですべて任せられます。

最近は会計ソフトとPOSレジ・ネットバンキング・クレジットカードを連携し、自動仕訳する方法も普及しています。税理士は連携設定をサポートし、自動仕訳の内容をチェックして正確性を担保してくれます。これにより、オーナーは店舗運営や新メニュー開発など本業に集中できます。

会計ソフトの比較についてはfreee vs マネーフォワード vs 弥生|個人事業主向け会計ソフト徹底比較2024で詳しく解説しています。

給与計算・年末調整の代行

従業員を雇用すると、毎月の給与計算、源泉徴収税の納付、社会保険料の計算、年末調整など多くの労務業務が発生します。給与計算を間違えると従業員との信頼関係が損なわれ、税務上のペナルティを受けることもあります。

税理士(または提携社労士)に給与計算を委託すれば、以下の業務を正確に処理してくれます。

  • 勤怠データから給与・残業代の計算
  • 源泉所得税・住民税・社会保険料の控除計算
  • 給与明細書の作成・発行
  • 源泉所得税の納付書作成
  • 年末調整(扶養控除申告書の回収、税額計算、源泉徴収票発行)
  • 法定調書合計表・給与支払報告書の提出

特に年末調整は計算が複雑で、配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除などを正確に適用する必要があります。税理士に任せれば、従業員から必要書類を集めるだけで、後はすべて処理してもらえます。

節税対策の提案とタイミング

税理士は決算前に利益予測を行い、効果的な節税策を提案してくれます。飲食店でよく活用される節税手法は以下の通りです。

  • 小規模企業共済:個人事業主や会社役員が加入でき、掛金(月額1,000円〜70,000円)が全額所得控除
  • 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済):掛金が全額経費(損金)になり、解約時に戻ってくる
  • 短期前払費用の特例:1年分の家賃や保険料を前払いして経費計上
  • 少額減価償却資産の特例:30万円未満の設備(調理器具、什器など)を一括経費計上(青色申告者のみ、年間300万円まで)
  • 従業員への決算賞与:決算期末に未払計上し、翌期初に支払う

ただし、無理な節税は資金繰りを悪化させるリスクがあります。税理士は利益・納税額・手元資金のバランスを見て、最適なタイミングと方法をアドバイスしてくれます。

具体例: 年間利益600万円が見込まれる個人事業主が、小規模企業共済に月7万円(年84万円)加入すると、所得税・住民税合わせて約25万円の節税効果があります(税率30%の場合)。

消費税申告・インボイス制度への対応

年間売上が1,000万円を超えると、2年後から消費税の課税事業者になります。また、インボイス制度により免税事業者でも適格請求書発行事業者(インボイス登録)を検討する必要があります。

税理士は以下のサポートを提供します。

  • 課税事業者になるタイミングの通知と届出書作成
  • インボイス登録のメリット・デメリット分析
  • 適格請求書(インボイス)の記載要件指導
  • 消費税申告書の作成(原則課税・簡易課税の有利判定含む)
  • 仕入税額控除の要件確認(適格請求書の保存チェック)

消費税は利益がなくても納税義務が発生するため、資金繰りへの影響が大きいです。税理士の助言で適切に準備しましょう。

▲ インボイス制度が飲食店に与える影響を解説

飲食店特有の経費処理と税務ポイント

飲食店ならではの経費処理には、注意すべきポイントが数多くあります。税理士がどのようにサポートしてくれるか見ていきましょう。

食材費・仕入れの計上と棚卸の重要性

食材費は飲食店の最大の経費ですが、購入時にすべて経費になるわけではありません。正しくは「期首棚卸高+当期仕入高−期末棚卸高=売上原価」として計算します。

つまり、月末や期末に残っている食材・調味料は「棚卸資産」として資産計上し、翌期の経費にする必要があります。税理士は棚卸の方法(実地棚卸、帳簿棚卸)や評価方法(最終仕入原価法など)を指導し、正確な原価計算をサポートします。

棚卸を正しく行わないと利益が不正確になり、税務調査で指摘されるリスクがあります。

飲食店の冷蔵庫内の食材在庫
期末の棚卸は正確な利益計算に不可欠

賄い食事・従業員食事代の処理

従業員に提供する賄い(まかない)食事は、税務上の取扱いが複雑です。原則として、従業員に無償または低額で食事を提供すると、その経済的利益は「給与」として課税されます。

ただし、以下の要件を満たせば給与課税されません。

  • 従業員が食事代の半分以上を負担している
  • 会社負担額が月額3,500円以下(1人あたり)

税理士はこの要件を満たす運用方法をアドバイスし、従業員からの徴収記録を適切に管理する仕組みを提案してくれます。なお、深夜勤務時の夜食については別途特例があります。

水道光熱費・家賃の家事按分(店舗兼自宅の場合)

自宅の一部を事務所として使っている場合や、店舗併用住宅の場合、家賃や水道光熱費を事業分と家事分に按分する必要があります。按分方法は合理的な基準(床面積比、使用時間比など)に基づく必要があり、税務調査で説明できることが重要です。

税理士は適切な按分率を算定し、計算根拠資料(間取り図、使用時間記録など)の保存を指導してくれます。

交際費・会議費・広告宣伝費の区分

取引先との飲食代、業界団体の会合費、新規顧客向けの試食会など、飲食店では様々な接待・交際の機会があります。税務上、これらは以下のように区分されます。

科目 内容 税務上の扱い
交際費 取引先との飲食、接待ゴルフ、お歳暮など 法人:年800万円まで全額損金算入(中小企業)
個人:全額経費
会議費 社内会議の茶菓子代、1人5,000円以下の飲食 全額経費(交際費に該当しない)
広告宣伝費 不特定多数向けの試食会、オープン記念の景品 全額経費
福利厚生費 従業員全員の忘年会、社員旅行(適正範囲) 全額経費(特定者のみは給与課税)

区分を間違えると、経費否認されたり、税務調査で指摘されたりします。税理士は領収書の内容から適切な科目を判断し、必要に応じて出席者リストなどの証拠書類を残すよう指導してくれます。

経費の範囲について詳しくはフリーランスエンジニアの経費はどこまでOK?認められる経費一覧と節税術も参考になります(業種は異なりますが、基本的な考え方は共通です)。

減価償却資産(厨房機器・内装工事)の処理

開業時や改装時に購入した厨房機器(冷蔵庫、オーブン、製氷機など)や内装工事費は、一括で経費にするのではなく、耐用年数に応じて減価償却します。

  • 厨房機器(金属製):耐用年数8年
  • 厨房機器(その他):耐用年数6年
  • 店舗内装工事(自己所有):耐用年数15〜20年
  • 店舗内装工事(賃貸借):耐用年数は契約期間または法定耐用年数の短い方

ただし、青色申告者で1台30万円未満の設備は「少額減価償却資産の特例」により一括経費計上できます(年間300万円まで)。税理士は取得価額と耐用年数を正しく判定し、最も有利な償却方法を選択してくれます。

注意: 賃貸店舗の内装工事費を「建物」として長期償却すると、退去時に除却損を計上できず税務上不利になることがあります。「建物附属設備」または「構築物」として適切に処理しましょう。

現金過不足・レジ差額の処理

飲食店では現金の取扱いミスで、レジ締め時に実際の現金とPOS記録が合わないことがあります。少額の差額は「現金過不足」勘定で処理し、期末に「雑損失」または「雑収入」に振り替えます。

ただし、恒常的に大きな現金過不足があると、税務調査で売上除外(脱税)を疑われるリスクがあります。税理士は日々のレジ点検体制を整備し、現金過不足が発生した場合の原因究明と記録方法を指導してくれます。

税理士を選ぶ際のチェックリスト

実際に税理士を選ぶ際に確認すべき項目をチェックリスト形式でまとめました。面談前に印刷して持参し、一つずつ確認しましょう。

専門性・実績に関するチェック項目

  • □ 飲食業の顧問先を何件担当しているか(最低でも5件以上が望ましい)
  • □ 自分の業態(和食、洋食、カフェ等)の実績があるか
  • □ 開業支援の実績は何件あるか
  • □ 融資申請の成功率はどのくらいか
  • □ 税務調査の立会経験はどのくらいあるか
  • □ インボイス制度への対応実績があるか

サービス内容に関するチェック項目

  • □ 訪問頻度(月次、四半期、年2回など)は希望に合うか
  • □ 訪問時間帯(飲食店の営業時間外に対応可能か)
  • □ オンライン面談に対応しているか
  • □ チャットやメールでの随時相談が可能か
  • □ POSレジと会計ソフトの連携設定をサポートしてくれるか
  • □ 記帳代行は含まれるか、別料金か
  • □ 給与計算・年末調整は対応可能か(別料金の場合は金額確認)
  • □ 社会保険・労務相談は対応可能か(提携社労士の紹介含む)
税理士との面談風景
面談では遠慮せず細かい質問をしましょう

料金に関するチェック項目

  • □ 月額顧問料はいくらか(売上規模に応じた料金表があるか)
  • □ 決算・確定申告料は別途いくらか
  • □ 記帳代行料は仕訳数によって変動するか
  • □ 給与計算は何名まで基本料金に含まれるか
  • □ 消費税申告は別料金か
  • □ 税務調査立会料はいくらか
  • □ 契約期間の縛りや解約条件はどうなっているか
  • □ 見積書は詳細な内訳があるか(不明瞭な一括料金になっていないか)

相性・コミュニケーションに関するチェック項目

  • □ 説明は分かりやすいか(専門用語を噛み砕いて説明してくれるか)
  • □ こちらの質問に真摯に答えてくれるか
  • □ 節税提案が積極的か(単なる記帳代行だけ