開業届の出し方と青色申告承認申請書|提出期限とメリット・デメリット


# 開業届の出し方と青色申告承認申請書|提出期限とメリット・デメリット

個人事業主やフリーランスとして独立を決めたものの、「開業届はいつ、どこに、どうやって出せばいいの?」「青色申告承認申請書も必要と聞いたけど、違いがわからない」と悩んでいませんか。開業手続きは一度きりの重要なステップですが、税務署での手続きに不安を感じる方も多いでしょう。

本記事では、開業届と青色申告承認申請書の出し方を、初めての方でも迷わないよう、必要書類・記入例・提出方法まで徹底的に解説します。提出期限やメリット・デメリット、屋号の決め方、さらには「出さないとどうなるか」まで、個人事業主が知っておくべき情報を網羅的にまとめました。

この記事を読めば、開業手続きの全体像が明確になり、最大65万円の青色申告特別控除を受けるための準備がスムーズに進みます。税務署に行く前に必要な知識をすべて身につけ、自信を持って開業手続きを完了させましょう。

開業届と青色申告承認申請書の書類一式
開業手続きに必要な主要書類(開業届・青色申告承認申請書)

開業届とは?個人事業主になるための基礎知識

開業届の正式名称と法的位置づけ

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、所得税法第229条に基づいて税務署へ提出する書類です。新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設・増設・移転・廃止したとき、または事業を廃止したときに提出が義務付けられています。

法律上は「事業開始から1ヶ月以内」に提出することが定められていますが、実際には提出しなくても罰則はありません。ただし、後述する青色申告の承認を受けるには開業届の提出が前提条件となるため、節税を考えるなら必ず提出すべき書類といえます。

ポイント: 開業届の提出自体に費用はかかりません。手数料無料で、郵送でも提出可能です。マイナンバーカードがあればe-Taxでのオンライン提出もできます。

開業届を提出すると何が変わるのか

開業届を提出することで、税務上「個人事業主」として正式に認められます。これにより以下のような変化が生じます。

  • 青色申告の申請が可能になる:最大65万円の特別控除を受けられる
  • 屋号付きの銀行口座が開設できる:事業用口座として信用度が向上
  • 小規模企業共済に加入できる:事業主の退職金制度を利用可能
  • 事業用のクレジットカードが作りやすくなる:審査で個人事業主としての実態を証明
  • 屋号での契約や請求書発行が可能:ビジネスとしての体裁が整う

一方で、失業保険(雇用保険の基本手当)を受給中の場合、開業届を提出すると受給資格を失う可能性があるため注意が必要です。また、配偶者の扶養に入っている場合、事業所得の金額によっては扶養から外れる可能性もあります。

開業届が不要なケース・提出すべきケース

副業として少額の収入がある程度であれば、必ずしも開業届を提出する必要はありません。ただし、以下のような場合は提出をおすすめします。

ケース 開業届の必要性 理由
フリーランスとして本格的に独立 必須 青色申告による節税効果が大きい
副業収入が年間100万円以上 推奨 継続的な事業とみなされ、控除メリット大
屋号で事業を展開したい 必須 屋号付き口座開設に開業届が必要
単発の副業(年間20万円以下) 不要 雑所得として処理可能
失業保険受給中 慎重に判断 受給資格喪失のリスクあり
個人事業主として働くフリーランスのイメージ
開業届提出後は正式な個人事業主として活動できる

青色申告承認申請書とは?白色申告との違い

青色申告制度の仕組みと目的

青色申告承認申請書(正式名称:所得税の青色申告承認申請書)は、確定申告で「青色申告」を行うために必要な書類です。青色申告制度は、適正な帳簿書類を備え付けて正確な記帳を行う納税者に対して、税制上の優遇措置を与える制度として昭和25年に創設されました。

令和2年分以降、青色申告特別控除は以下のように改正されています。

  • 65万円控除:e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行い、複式簿記で記帳
  • 55万円控除:複式簿記で記帳するが、e-Tax等を利用しない場合
  • 10万円控除:簡易簿記(単式簿記)で記帳する場合

一方、白色申告は特別な控除がなく、帳簿も簡易なもので済みますが、節税効果はほとんどありません。現在は白色申告でも記帳義務が課されているため、手間の面での差は以前ほど大きくなくなっています。

ポイント: 青色申告特別控除65万円を受ければ、所得税・住民税・国民健康保険料のすべてが軽減されます。年収500万円のフリーランスなら、税金・保険料合わせて年間約20万円以上の節約になることも珍しくありません。

青色申告のメリット一覧

青色申告には特別控除以外にも多くのメリットがあります。主なものを以下にまとめました。

  • 青色申告特別控除:最大65万円の所得控除(e-Tax利用時)
  • 青色事業専従者給与:家族への給与を経費計上できる(白色は配偶者86万円、その他50万円まで)
  • 純損失の繰越控除:赤字を3年間繰り越して翌年以降の黒字と相殺可能
  • 純損失の繰戻還付:前年の所得税の還付を受けられる
  • 少額減価償却資産の特例:30万円未満の資産を一括経費計上できる(年間300万円まで)
  • 貸倒引当金の計上:売掛金等の5.5%を経費計上できる

これらのメリットは、事業規模が大きくなるほど効果が顕著になります。特に家族を従業員として雇う予定がある場合や、初期投資でパソコンや機材を購入する場合は、青色申告のメリットが非常に大きくなります。

白色申告と青色申告の比較表

項目 青色申告(65万円控除) 青色申告(10万円控除) 白色申告
特別控除額 65万円 10万円 なし
記帳方法 複式簿記 簡易簿記 簡易な帳簿
提出書類 確定申告書B、青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書) 確定申告書B、青色申告決算書(損益計算書) 確定申告書B、収支内訳書
e-Tax要件 必須(または電子帳簿保存) 不要 不要
赤字の繰越 3年間可能 3年間可能 不可
専従者給与 全額経費可能 全額経費可能 配偶者86万円、その他50万円まで
30万円未満資産 一括経費計上可能(年300万円まで) 一括経費計上可能(年300万円まで) 10万円以上は減価償却

▲ 青色申告と白色申告の違いを税理士が徹底解説

開業届の書き方|記入項目を徹底解説

開業届の様式と入手方法

開業届は、国税庁ホームページから「個人事業の開業・廃業等届出書」としてPDFファイルをダウンロードできます。また、最寄りの税務署窓口でも無料で入手可能です。近年では、freee開業やマネーフォワード クラウド開業届などのWebサービスを使えば、質問に答えるだけで自動的に書類を作成できるため、記入ミスを防げます。

開業届はA4サイズ1枚の書類で、記入する項目は意外と少なく、初めての方でも20〜30分程度で完成します。

開業届の記入項目と記入例

開業届の主な記入項目を順に解説します。

①提出先の税務署名と提出日

納税地を所轄する税務署名を記入します。納税地は通常、自宅の住所です。提出日は実際に税務署に持参する日または郵送する日を記入してください。

②納税地

「住所地」「居所地」「事業所等」のいずれかにチェックを入れます。ほとんどの場合は「住所地」で問題ありません。自宅とは別に事務所を借りている場合でも、通常は住所地を納税地とします。

③氏名・生年月日・個人番号(マイナンバー)

氏名は押印も必要です(認印可)。個人番号欄には12桁のマイナンバーを記入します。

④職業・屋号

職業欄には具体的な業種を記入します(例:ライター、Webデザイナー、システムエンジニア、コンサルタント等)。この職業欄の記載内容によって、個人事業税の税率が決まる場合があるため重要です。

屋号は任意ですが、記入すると屋号付きの銀行口座開設や請求書発行に使えます。後から変更も可能なので、迷う場合は空欄でも構いません。

ポイント: 職業欄で「ライター」「デザイナー」など第1種事業(事業税率5%)に該当する職業を記載すると、年間所得290万円を超えた場合に個人事業税が課税されます。「コンサルタント」など第3種事業(同5%)も同様です。IT系の一部職種は非課税の場合もあるため、詳細は各都道府県税事務所に確認しましょう。

⑤届出の区分

新規開業の場合は「開業」にチェックを入れます。他の事業を引き継いだ場合は「事業を引き継いだ場合の住所・氏名」欄も記入します。

⑥開業日

事業を開始した日を記入します。すでに活動を始めている場合は、実際に開始した日でも構いませんし、開業届提出日としても問題ありません。ただし、青色申告承認申請書の提出期限に影響するため、過去の日付を記入する場合は注意が必要です。

⑦事業所等を新増設した場合

新規開業の場合は記入不要です。

⑧廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合

新規開業の場合は記入不要です。

⑨開業に伴う届出書の提出の有無

「青色申告承認申請書」を同時に提出する場合は「有」にチェックします。消費税の課税事業者になる場合(課税売上高1,000万円超)は、消費税関連の届出も「有」にチェックしますが、開業時点では通常「無」で問題ありません。

⑩事業の概要

具体的な事業内容を記入します。(例:Webサイトの企画・制作・運営、システム開発、経営コンサルティング、ライティング業務など)

⑪給与等の支払の状況

従業員や専従者を雇う予定がある場合に記入します。開業時に雇用予定がなければ空欄で構いません。後から従業員を雇う場合は別途「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。

開業届の記入例サンプル
開業届の記入例(Webデザイナーの場合)

屋号の決め方とポイント

屋号は個人事業主の「お店の名前」のようなもので、法人の商号にあたります。屋号を決める際のポイントは以下の通りです。

  • 覚えやすくシンプルな名前:長すぎず、発音しやすいものが理想
  • 事業内容がイメージできる:何の事業をしているか分かりやすい
  • 商標登録されていない:他社の商標権を侵害しないよう確認
  • ドメインが取得可能:Webサイト用のドメインが空いているか確認
  • 「株式会社」等の法人名称は使用不可:個人事業主は法人格を示す名称を使えません

屋号は後から変更も可能です。変更する場合は、再度開業届を提出するか、確定申告時に新しい屋号を記載することで変更できます。銀行口座の屋号変更には、開業届の控えなど証明書類が必要になる場合があります。

注意: 屋号に「銀行」「信託」「保険」など特定の業種を想起させる名称を使うと、法律違反になる可能性があります。また、有名企業と紛らわしい屋号は、商標権侵害や不正競争防止法違反に問われるリスクがあるため避けましょう。

青色申告承認申請書の書き方|記入項目を徹底解説

青色申告承認申請書の様式と入手方法

青色申告承認申請書も、国税庁ホームページから「所得税の青色申告承認申請書」としてPDFダウンロードできます。開業届と同様に、税務署窓口でも入手可能で、開業届と同時に提出することで手続きを一度で済ませられます。

青色申告承認申請書の記入項目

①提出先税務署・提出日

開業届と同じ税務署名と提出日を記入します。

②納税地・氏名・生年月日

開業届と同じ内容を記入します。

③職業・屋号

開業届と同じ内容を記入します。一貫性を保つため、開業届と同一にしてください。

④所得の種類

ほとんどの個人事業主は「事業所得」にチェックします。不動産賃貸業の場合は「不動産所得」、山林業の場合は「山林所得」にチェックします。

⑤いままでに青色申告承認の取消し等を受けたこと又は取りやめをしたことの有無

初めて青色申告する場合は「無」にチェックします。

⑥本年1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日

開業届に記載した開業日と同じ日付を記入します。1月15日以前に開業した場合は空欄で構いません。

⑦相続による事業承継の有無

通常は「無」にチェックします。親族の事業を相続した場合は「有」にチェックし、相続開始日を記入します。

⑧簿記方式

65万円控除を受ける場合は「複式簿記」にチェックします。10万円控除で良い場合は「簡易簿記」を選択できますが、会計ソフトを使えば複式簿記も容易なため、65万円控除をおすすめします。

⑨備付帳簿名

65万円控除を受けるには、以下の帳簿を備え付ける必要があります。該当するものにチェックを入れます。

  • 現金出納帳
  • 売掛帳
  • 買掛帳
  • 経費帳
  • 固定資産台帳
  • 預金出納帳
  • 総勘定元帳
  • 仕訳帳

会計ソフトを使用する場合は、これらの帳簿は自動的に作成されるため、該当する項目すべてにチェックを入れて問題ありません。最低限、「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」「預金出納帳」「総勘定元帳」「仕訳帳」にチェックを入れることが推奨されます。

ポイント: 会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生会計など)を使用すれば、日々の取引を入力するだけで必要な帳簿がすべて自動作成されます。簿記の知識がなくても65万円控除が受けられるため、開業と同時に会計ソフトの導入を強くおすすめします。
青色申告承認申請書の記入例サンプル
青色申告承認申請書の記入例(複式簿記を選択した場合)

開業届・青色申告承認申請書の提出期限と注意点

開業届の提出期限

所得税法第229条により、開業届は「事業開始の事実があった日から1ヶ月以内」に提出することが定められています。例えば、2024年4月1日に開業した場合、2024年5月1日が提出期限となります。

ただし、提出期限を過ぎても罰則はありません。実務上は開業から数ヶ月経過してから提出するケースも珍しくありません。ただし、青色申告承認申請書の提出期限に影響するため、できるだけ早めの提出が望ましいでしょう。

青色申告承認申請書の提出期限(重要)

青色申告承認申請書の提出期限は、開業日によって異なるため注意が必要です。

開業時期 青色申告承認申請書の提出期限 適用開始年
1月1日〜1月15日に開業 その年の3月15日まで 開業年から適用
1月16日以降に開業 開業日から2ヶ月以内 開業年から適用
すでに開業済み(白色→青色へ変更) 青色申告したい年の3月15日まで 翌年から適用
注意: 例えば2024年10月1日に開業した場合、青色申告承認申請書の提出期限は2024年11月30日です。この期限を過ぎると、2024年分の確定申告は白色申告となり、青色申告できるのは2025年分からになります(2025年3月15日までに再度申請すれば2025年分から適用)。

提出期限を過ぎてしまった場合の対処法

もし青色申告承認申請書の提出期限を過ぎてしまった場合、その年は白色申告で確定申告を行い、翌年の3月15日までに改めて青色申告承認申請書を提出することで、翌年分から青色申告が可能になります。

例:2024年4月1日開業で、申請期限(6月1日)を過ぎてしまった場合

  • 2024年分(2025年3月15日期限の確定申告):白色申告
  • 2025年3月15日までに青色申告承認申請書を提出
  • 2025年分(2026年3月15日期限の確定申告)以降:青色申告可能

提出期限が土日祝日の場合

提出期限が土曜日・日曜日・祝日に当たる場合は、その翌日(翌営業日)が期限となります。例えば、開業日から2ヶ月後が日曜日の場合、月曜日が提出期限です。

カレンダーで提出期限を確認するイメージ
開業日から逆算して提出期限を必ず確認しましょう

開業届・青色申告承認申請書の提出方法(窓口・郵送・e-Tax)

提出方法①:税務署窓口に直接持参

最も確実な方法は、所轄の税務署窓口に直接持参することです。受付時間は平日8時30分〜17時が一般的です(税務署によって異なる場合があります)。

STEP 1: 所轄税務署を国税庁ホームページで確認する
STEP 2: 開業届・青色申告承認申請書を2部ずつ作成(提出用と控え用)
STEP 3: 本人確認書類(マイナンバーカードまたは通知カード+身分証明書)を持参
STEP 4: 税務署窓口で提出し、控えに受領印をもらう

持参する際の必要書類

  • 開業届 2部(提出用・控え用)
  • 青色申告承認申請書 2部(提出用・控え用)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、または通知カード+運転免許証等)
  • 印鑑(書類に押印したものと同じもの)

控え用には税務署の受領印(日付印)が押されます。この控えは、銀行口座開設時や各種契約時に「開業の証明」として必要になるため、大切に保管してください。

提出方法②:郵送で提出

税務署に行く時間がない場合は、郵送でも提出できます。郵送の場合、消印日が提出日とみなされるため、期限ギリギリの場合は消印日に注意してください。

STEP 1: 開業届・青色申告承認申請書を2部ずつ作成
STEP 2: 本人確認書類の写し(マイナンバーカードの両面コピーまたは通知カード+身分証明書のコピー)を同封
STEP 3: 返信用封筒(切手貼付・自分の住所記入済み)を同封
STEP 4: 所轄税務署宛に郵送(普通郵便でも可、心配なら特定記録郵便や簡易書留)

返信用封筒を同封しておくことで、受領印が押された控えが返送されてきます。返信用封筒には、長形3号封筒に84円切手(書類が多い場合は94円)を貼り、自分の住所・氏名を記入しておきます。

ポイント: 郵送の場合、返信までに1〜2週間かかることがあります。すぐに控えが必要な場合は窓口持参またはe-Taxがおすすめです。

提出方法③:e-Tax(電子申告)で提出

マイナンバーカードとICカードリーダー(またはマイナンバーカード読み取り対応のスマートフォン)があれば、e-Taxで電子申告できます。自宅から24時間いつでも提出でき、受付完了のメッセージがすぐに確認できるため、提出済みの証明が即座に得られます。

e-Tax提出の手順

  1. e-Taxソフト(Web版またはダウンロード版)をインストール
  2. マイナンバーカードで電子証明書を取得・登録
  3. 開業届・青色申告承認申請書の電子データを作成
  4. 電子署名を付与して送信
  5. 受信通知を確認・保存

ただし、e-Taxの初期設定が複雑に感じる方も多いため、初めての場合は税務署窓口または郵送の方が簡単かもしれません。会計ソフト(freeeやマネーフォワード等)の中には、開業届のe-Tax送信に対応しているものもあります。

e-Taxでの電子申告画面イメージ
e-Taxを利用すれば自宅から24時間提出可能

開業freee・マネーフォワード クラウド開業届の活用

近年、「開業freee」や「マネーフォワード クラウド開業届」などの無料サービスを使えば、質問に答えていくだけで開業届と青色申告承認申請書が自動作成されます。これらのサービスの特徴は以下の通りです。

  • 完全無料:書類作成に費用がかからない
  • 質問形式で簡単:専門知識不要で記入漏れを防げる
  • PDF出力:作成した書類をPDFでダウンロードして印刷・郵送できる
  • 必要書類一覧の表示:何を用意すべきか明確に提示される
  • e-Tax連携:一部サービスは電子申告にも対応

特に初めて開業する方には、これらのサービスを利用することで、記入ミスや提出漏れを大幅に減らせます。

開業届を提出するメリット・デメリット

開業届を提出する7つのメリット

①青色申告が可能になり、最大65万円の特別控除を受けられる

前述の通り、青色申告承認申請書を提出するには開業届の提出が前提です。青色申告により、所得から最大65万円を控除できるため、所得税・住民税・国民健康保険料が大幅に軽減されます。

具体例:年収500万円のフリーランスエンジニアAさんの場合

  • 経費:100万円
  • 事業所得:400万円
  • 青色申告特別控除:65万円
  • 課税所得:335万円(その他控除前)

白色申告の場合、事業所得400万円がそのまま課税対象となりますが、青色申告なら335万円まで圧縮できます。所得税率10%として約6.5万円、住民税率10%として約6.5万円、合計約13万円の節税効果があります。さらに国民健康保険料も所得に応じて計算されるため、年間で20万円以上の負担軽減になることもあります。

②屋号付き銀行口座を開設できる

開業届を提出すると、「屋号+本名」の銀行口座を開設できます。これにより、事業用とプライベート用の口座を明確に分離でき、経理処理が格段に楽になります。請求書や領収書にも屋号を記載できるため、ビジネスとしての信用度も向上します。

③小規模企業共済に加入できる

小規模企業共済は、個人事業主のための退職金制度です。掛金は月1,000円〜70,000円の範囲で設定でき、全額が所得控除の対象となります。廃業時や退職時に共済金を受け取れるため、将来の備えとして非常に有効です。ただし、加入には開業届の控え(受領印付き)が必要です。

④事業用クレジットカードの審査に通りやすくなる

開業届を提出することで「個人事業主」としての実態が証明されるため、ビジネス用クレジットカードの審査で有利になります。カード会社によっては、開業届の控えの提出を求められる場合もあります。

⑤経費計上の範囲が明確になる

開業日を明確にすることで、どこから経費として計上できるかが明確になります。開業準備のための支出(開業費)も繰延資産として計上でき、任意の年に償却できるため、赤字年を避けて黒字年に経費化することも可能です。

⑥社会的信用が向上する

取引先との契約や、賃貸物件の契約(事務所を借りる場合)などで、開業届の控えを求められることがあります。開業届を提出していることで、正式に事業を営んでいる証明となり、取引がスムーズに進みやすくなります。

⑦補助金・助成金の申請要件を満たす

各自治体や国の補助金・助成金制度の中には、「開業届を提出している個人事業主」を対象とするものが多くあります。IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金などの申請に、開業届の控えが必要になる場合があります。

個人事業主向けの各種メリットを示した図解
開業届提出により得られる主なメリット一覧

開業届を提出するデメリット・注意点

①失業保険(雇用保険の基本手当)を受給できなくなる

会社を退職後、失業保険を受給しながら開業準備をしている方は要注意です。開業届を提出すると「事業を開始した」とみなされ、失業保険の受給資格を失います。ハローワークで「再就職手当」を受け取れる可能性もありますが、条件があるため、失業保険受給中の方は受給終了後に開業届を提出することをおすすめします。

②配偶者の扶養から外れる可能性がある

配偶者の社会保険の扶養に入っている場合、事業所得が年間130万円(または106万円、健保組合による)を超えると扶養から外れます。開業届を出したこと自体で扶養から外れるわけではありませんが、収入が増えると扶養の要件を外れる可能性があります。

③個人事業税が課税される可能性がある

都道府県が課税する個人事業税は、事業所得が年間290万円を超えた場合に課税されます(法定業種の場合)。税率は業種により3%〜5%です。ただし、この税金は開業届提出の有無に関わらず、一定以上の事業所得があれば課税されるため、開業届提出自体のデメリットとは言えません。

④確定申告が義務化される(実質的には元から義務)

開業届を提出すると、所得の多寡に関わらず確定申告をすべきという意識が強まります。ただし、法律上は開業届の有無に関係なく、一定以上の所得があれば確定申告は義務です。むしろ、開業届を出すことで記帳の意識が高まり、適正な申告ができるようになるメリットの方が大きいでしょう。

注意: 失業保険受給中、または配偶者の扶養内で働きたい場合は、開業届の提出時期を慎重に検討しましょう。受給・扶養の条件を事前にハローワークや健康保険組合に確認することをおすすめします。

▲ 開業届を出すメリット・デメリットを税理士が徹底解説

開業後に必要なその他の届出・手続き

給与支払事務所等の開設届出書

従業員や青色事業専従者に給与を支払う場合、「給与支払事務所等の開設届出書」を給与支払開始から1ヶ月以内に提出する必要があります。この届出をすると、源泉所得税の納付や年末調整の義務が生じます。

青色事業専従者給与に関する届出書

配偶者や親族に給与を支払い、それを経費として計上するには、「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。提出期限は以下の通りです。

  • 開業初年度:開業日から2ヶ月以内
  • 2年目以降:専従者給与を支払う年の3月15日まで

この届出により、配偶者や親族への給与を全額経費計上できます(白色申告では配偶者86万円、その他の親族50万円までしか控除できません)。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

従業員が10人未満の場合、源泉所得税の納付を年2回にまとめる「納期の特例」を申請できます。通常は毎月納付が必要ですが、この特例により、1月〜6月分を7月10日、7月〜12月分を翌年1月20日にまとめて納付できます。

消費税関連の届出(課税売上高1,000万円超の場合)

開業から2年間は原則として消費税の免税事業者ですが、以下の場合は課税事業者となり、届出が必要です。

  • 前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合
  • 前年の上半期(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合
  • あえて課税事業者を選択する場合(インボイス制度対応など)

令和5年10月からのインボイス制度開始により、免税事業者のままでは取引先が仕入税額控除を受けられなくなるため、あえて課税事業者を選択する個人事業主も増えています。その場合、「消費税課税事業者選択届出書」や「適格請求書発行事業者の登録申請書」の提出が必要です。

開業後に必要な各種届出書の一覧
開業後の事業展開に応じて必要な届出書

開業届提出後の確定申告準備

会計ソフトの導入は開業と同時に

青色申告で65万円控除を受けるには、日々の取引を複式簿記で記帳する必要があります。簿記の知識がない方でも、クラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で仕訳を作成できます。

主要な会計ソフトの特徴は以下の通りです。

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