株式投資の確定申告|特定口座と一般口座の違い・配当金と譲渡益の申告判断


# 株式投資の確定申告|特定口座と一般口座の違い・配当金と譲渡益の申告判断

株式投資をしている個人事業主・フリーランスの方にとって、「自分の場合は確定申告が必要なの?」と悩むケースは非常に多いのではないでしょうか。特定口座(源泉徴収あり)を利用していれば申告不要と聞いたものの、損失が出た年や複数口座を持っている場合、配当金の扱いなど、判断に迷うポイントが数多く存在します。

この記事では、株式投資に関する確定申告の要否判断から、特定口座と一般口座の違い、配当金と譲渡益それぞれの申告方法、さらには節税につながる損益通算や繰越控除まで、個人事業主・フリーランス向けに徹底解説します。

実際の申告事例や税額シミュレーション、口座タイプ別の比較表も交えながら、あなたの投資スタイルに最適な申告方法が分かる内容となっています。読み終える頃には、自信を持って確定申告に臨めるようになるでしょう。

※当記事は2024年(令和6年)の税制に基づいて執筆しています。株式投資と事業所得の両方がある方は、個人事業主の確定申告やり方完全ガイドも合わせてご確認ください。

株式投資の確定申告が必要かどうかを判断するフローチャート図
株式投資の確定申告要否を判断するためのフローチャート

株式投資で確定申告が必要になるケース・不要なケース

株式投資において確定申告が必要かどうかは、主に「口座の種類」「所得の発生状況」「他の所得との関係」によって決まります。まずは基本的な判断基準を理解しましょう。

確定申告が不要なケース

以下のケースでは、原則として確定申告は不要です。

  • 特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合:証券会社が自動的に税金を源泉徴収し、納税を完結してくれます
  • NISA口座・つみたてNISA口座での取引:非課税制度のため申告不要です
  • 給与所得者で年間の譲渡益・配当所得が20万円以下の場合:確定申告義務がありません(ただし住民税の申告は原則必要)
  • 年間を通じて取引がなかった、または損失のみで利益が発生していない場合(ただし損失の繰越を希望する場合は申告が必要)
ポイント: 特定口座(源泉徴収あり)は最も手間のかからない選択肢です。ただし、損失が出た場合や他の口座と損益通算したい場合は、あえて確定申告することで節税メリットが得られます。

確定申告が必要になるケース

以下のケースでは確定申告が必要、または申告したほうが有利になります。

  1. 一般口座で取引している場合:自分で譲渡損益を計算し、申告しなければなりません
  2. 特定口座(源泉徴収なし)を利用している場合:年間取引報告書をもとに申告が必要です
  3. 複数の証券会社で取引があり、損益通算したい場合:A証券で利益、B証券で損失が出ている場合など
  4. 上場株式等の譲渡損失を翌年以降に繰り越したい場合:確定申告することで最長3年間繰り越せます
  5. 配当金について配当控除を受けたい場合:総合課税を選択して申告することで控除が受けられます
  6. 外国株式の配当で外国税額控除を受けたい場合:二重課税を回避できます
  7. 個人事業主で事業所得があり、株式の譲渡益・配当所得も合算して申告する場合
確定申告が必要なケースと不要なケースを比較した一覧表
株式投資の確定申告要否一覧

個人事業主・フリーランスが特に注意すべきポイント

個人事業主やフリーランスの方は、もともと事業所得の確定申告をする必要があります。そのため株式投資の所得についても同時に申告するのが一般的です。

  • 事業所得と株式の譲渡所得は別々に計算します(損益通算できません)
  • 配当所得は総合課税か申告分離課税を選択できます
  • 事業で使う会計ソフトとは別に、株式の損益計算が必要になります
  • 国民健康保険料への影響を考慮する必要があります(申告方法により保険料が変わる場合があります)

個人事業主の方で確定申告全般について知りたい方は、個人事業主の確定申告やり方完全ガイドをご参照ください。

注意: 「確定申告不要」と「確定申告したほうが得」は異なります。特に損失が出ている年は、申告することで将来の節税につながる可能性があります。

特定口座と一般口座の違いを徹底比較

株式投資を始める際、まず選択するのが「どの口座で取引するか」です。特定口座と一般口座には大きな違いがあり、確定申告の手間や税金の納付方法が変わってきます。

特定口座とは何か

特定口座は、証券会社が投資家に代わって譲渡損益の計算を行ってくれる口座です。平成15年(2003年)に導入され、個人投資家の確定申告負担を軽減する目的で作られました。

特定口座にはさらに2つのタイプがあります。

  • 特定口座(源泉徴収あり):証券会社が自動的に税金を源泉徴収し、納税まで完結してくれます。確定申告は原則不要です。
  • 特定口座(源泉徴収なし):証券会社が年間取引報告書を作成してくれますが、納税は自分で確定申告を通じて行います。

一般口座とは何か

一般口座は、特定口座が導入される前から存在する従来型の口座です。譲渡損益の計算も、確定申告も、すべて投資家自身が行う必要があります。

現在では、特定口座が主流となっており、あえて一般口座を選ぶメリットは限定的です。ただし、以下のような場合には一般口座を使うこともあります。

  • 相続や贈与で取得した株式を保有する場合
  • 外国株式など特定口座では扱えない商品を取引する場合
  • 年間の利益が少なく、申告不要の範囲に収まる見込みの場合
特定口座と一般口座の違いを図解したインフォグラフィック
特定口座と一般口座の仕組みの違い

口座タイプ別の詳細比較表

項目 特定口座(源泉徴収あり) 特定口座(源泉徴収なし) 一般口座
損益計算 証券会社が実施 証券会社が実施 自分で実施
年間取引報告書 証券会社が作成 証券会社が作成 なし(自分で作成)
税金の徴収 証券会社が自動徴収 確定申告で納付 確定申告で納付
確定申告 原則不要(任意で可能) 必要 必要
配当金の受取 自動的に税引後の金額 自動的に税引後の金額 自動的に税引後の金額
口座内での損益通算 自動で実施 年間取引報告書に反映 自分で計算
複数口座の損益通算 確定申告が必要 確定申告で可能 確定申告で可能
譲渡損失の繰越 確定申告が必要 確定申告で可能 確定申告で可能
おすすめの人 初心者、手間をかけたくない人 給与所得者で20万円以下の利益の人 ほとんどいない(特殊なケースのみ)

源泉徴収ありとなしの選び方

特定口座の中でも、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のどちらを選ぶかは重要な判断ポイントです。

源泉徴収ありを選ぶべき人:

  • 確定申告の手間を完全に省きたい
  • 株式投資の利益が年間20万円を大きく超える見込み
  • 扶養家族に入っているなど、所得増加による影響を避けたい
  • 国民健康保険料への影響を避けたい
源泉徴収なしを選ぶべき人:

  • 給与所得者で株式の利益が年間20万円以下に収まる見込み(確定申告不要になる)
  • 損失が出る可能性があり、他の口座と損益通算したい
  • 配当控除を積極的に活用したい
  • 源泉徴収された税金をいったん運用資金に回したい

口座タイプの変更は可能か

特定口座の源泉徴収あり・なしの変更は、年単位でのみ可能です。年の途中では変更できないため、12月末までに翌年分の設定を変更する必要があります。

一般口座から特定口座への変更も原則として可能ですが、すでに保有している株式を特定口座に移管できるかは証券会社によって異なります。多くの場合、新規購入分からのみ特定口座での管理となります。

上場株式の譲渡益にかかる税金と申告方法

株式を売却して得た利益(譲渡益)には税金がかかります。この税金の仕組みと申告方法を詳しく見ていきましょう。

上場株式等の譲渡所得に対する税率

上場株式等の譲渡所得に対しては、申告分離課税が適用され、他の所得とは分けて課税されます。税率は以下の通りです。

  • 所得税:15.315%(復興特別所得税0.315%を含む)
  • 住民税:5%
  • 合計:20.315%

この税率は、譲渡益の金額に関わらず一律です。累進課税ではないため、利益が大きくなっても税率は変わりません。

ポイント: 事業所得が赤字の場合でも、株式の譲渡益には20.315%の税金がかかります。事業所得と株式の譲渡所得は損益通算できません。
株式譲渡益の税金計算方法を示した図解
株式譲渡益の税金計算の流れ

譲渡所得の計算方法

株式の譲渡所得は、以下の計算式で求めます。

譲渡所得 = 譲渡収入金額 – (取得費 + 譲渡費用)

  • 譲渡収入金額:株式を売却して得た金額
  • 取得費:株式の購入代金、購入時の手数料など
  • 譲渡費用:売却時の手数料など

特定口座を利用している場合、証券会社がこの計算を自動で行い、年間取引報告書に記載してくれます。

具体的な計算例

【ケース1】フリーランスデザイナーAさんの場合

取引内容:

  • X社株式を50万円(手数料5,000円)で購入
  • 同株式を80万円(手数料8,000円)で売却

計算:

  • 譲渡収入:800,000円
  • 取得費:505,000円(500,000円 + 5,000円)
  • 譲渡費用:8,000円
  • 譲渡所得:800,000円 – 505,000円 – 8,000円 = 287,000円
  • 税額:287,000円 × 20.315% = 58,304円

一般口座での申告方法

一般口座で取引している場合、自分で譲渡損益を計算する必要があります。手順は以下の通りです。

  1. 取引記録の整理:年間のすべての売買記録を集めます
  2. 銘柄ごとの取得単価の計算:同じ銘柄を複数回購入している場合、総平均法で計算します
  3. 譲渡損益計算書の作成:国税庁の「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を使用します
  4. 確定申告書への転記:申告書第三表(分離課税用)に記入します
注意: 一般口座での計算ミスは税務調査の対象になりやすいため、不安な場合は税理士に相談することをおすすめします。

特定口座での申告方法

特定口座(源泉徴収なし)または特定口座(源泉徴収あり)で任意で申告する場合、証券会社から交付される「特定口座年間取引報告書」を使用します。

  1. 年間取引報告書の入手:通常、1月中旬~下旬に証券会社から交付されます
  2. 確定申告書への転記:報告書の数字をそのまま申告書第三表に転記します
  3. 添付書類:年間取引報告書の添付が必要です(e-Taxの場合は省略可能ですが保管義務あり)

特定口座を利用している場合、計算はすでに完了しているため、申告作業自体は比較的簡単です。

▲ 株式譲渡所得の確定申告書の書き方を解説した動画

複数の証券会社を利用している場合の損益通算

複数の証券会社で口座を持っている場合、各口座の損益を通算することができます。

【ケース2】ITエンジニアBさんの場合

取引内容:

  • A証券(特定口座・源泉徴収あり):利益120万円
  • B証券(特定口座・源泉徴収あり):損失80万円

申告しない場合:

  • A証券で120万円 × 20.315% = 243,780円が源泉徴収される
  • B証券の損失は切り捨て
  • 実質税負担:243,780円

確定申告で損益通算した場合:

  • 通算後の利益:120万円 – 80万円 = 40万円
  • 正しい税額:40万円 × 20.315% = 81,260円
  • 還付金:243,780円 – 81,260円 = 162,520円

このように、複数口座を持っている場合は確定申告することで大きな節税効果が得られる可能性があります。

配当金の確定申告|申告方法の選択と配当控除

株式の配当金についても、申告方法によって税負担が変わってきます。配当金の課税方式と、どの方法を選ぶべきかを詳しく解説します。

配当所得の3つの課税方式

上場株式の配当金については、以下の3つの課税方式から選択できます。

課税方式 税率 申告の要否 メリット デメリット
申告不要制度 20.315%(源泉徴収で完結) 不要 手続き不要、所得に含まれない 配当控除が受けられない
総合課税 5%~45%(累進税率) 必要 配当控除が受けられる 所得が増えて国保料等に影響
申告分離課税 20.315% 必要 譲渡損失と損益通算可能 配当控除が受けられない
配当金の3つの課税方式を比較した図表
配当金の課税方式による違いの比較

配当控除とは

配当控除は、二重課税を調整するための制度です。企業は利益に対して法人税を支払った後に配当を行います。その配当にさらに所得税がかかると二重課税になるため、一定額を税額から控除できる仕組みです。

配当控除の控除率:

  • 課税所得1,000万円以下の部分:配当所得の10%(住民税は2.8%)
  • 課税所得1,000万円超の部分:配当所得の5%(住民税は1.4%)

総合課税を選択した場合にのみ、この配当控除を受けることができます。

どの申告方法を選ぶべきか

どの課税方式が有利かは、あなたの所得状況によって異なります。

申告不要制度を選ぶべき人:

  • 課税所得が高い人(所得税率が23%以上)
  • 国民健康保険料への影響を避けたい個人事業主
  • 扶養に入っている人
  • 手間をかけたくない人
総合課税を選ぶべき人:

  • 課税所得が低い人(所得税率が20%以下)
  • 配当控除を活用したい人
  • 社会保険料への影響が少ない人(会社員等)
申告分離課税を選ぶべき人:

  • 株式の譲渡損失があり、配当金と損益通算したい人
  • 前年からの繰越損失がある人

配当控除のシミュレーション

【ケース3】課税所得500万円の個人事業主Cさんの場合

配当金:30万円

パターン1:申告不要制度を選択

  • 源泉徴収:30万円 × 20.315% = 60,945円
  • 実質税負担:60,945円

パターン2:総合課税を選択

  • 所得税率:20%(課税所得500万円の場合)
  • 所得税:30万円 × 20% = 60,000円
  • 配当控除:30万円 × 10% = 30,000円
  • 実質所得税:60,000円 – 30,000円 = 30,000円
  • 住民税:30万円 × 10% – (30万円 × 2.8%) = 21,600円
  • 合計税負担:51,600円
  • 節税効果:60,945円 – 51,600円 = 9,345円

課税所得が500万円程度の場合、総合課税を選択したほうが有利になることが分かります。

令和5年度税制改正による所得税・住民税の申告方法統一

令和6年分(2024年分)の確定申告からは重要な変更があります。

重要な変更点: 令和6年分(2024年分)以降、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することができなくなりました。従来は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という選択ができましたが、今後は統一する必要があります。

この変更により、国民健康保険料への影響をより慎重に検討する必要があります。個人事業主の方は、配当金を申告することで国保料が増加する可能性があるため、総額での損得を計算することが重要です。

令和6年分からの配当金申告方法の変更点を示した図
令和6年分以降の配当金申告ルールの変更

譲渡損失の繰越控除|3年間損失を繰り越す方法

株式投資で損失が出た年は、確定申告することで将来の利益と相殺できる制度があります。これが「譲渡損失の繰越控除」です。

譲渡損失の繰越控除とは

上場株式等の譲渡損失は、確定申告することで翌年以降最長3年間繰り越すことができます。繰り越した損失は、翌年以降の譲渡益や配当所得(申告分離課税を選択した場合)から差し引くことができます。

ポイント: 特定口座(源泉徴収あり)を利用していて損失が出た年も、確定申告しないと繰越控除は受けられません。損失が出た年こそ確定申告が重要です。

繰越控除の要件

繰越控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 損失が発生した年に確定申告をすること(損失の申告をしないと繰越できません)
  • 繰越期間中、毎年継続して確定申告をすること(途中で申告をやめると繰越が途切れます)
  • 上場株式等に係る譲渡損失であること
注意: 繰越控除を受けるには、損失が出た年だけでなく、その後の年も継続して確定申告が必要です。1年でも申告を忘れると、その時点で繰越が失効します。

繰越控除の具体例

【ケース4】フリーランスライターDさんの4年間の推移

令和3年(2021年):

  • 譲渡損失:150万円
  • 確定申告をして損失を繰越

令和4年(2022年):

  • 譲渡益:50万円
  • 繰越損失と相殺:150万円 – 50万円 = 残り100万円を繰越
  • 納税額:0円

令和5年(2023年):

  • 譲渡益:30万円
  • 繰越損失と相殺:100万円 – 30万円 = 残り70万円を繰越
  • 納税額:0円

令和6年(2024年):

  • 譲渡益:100万円
  • 繰越損失と相殺:100万円 – 70万円 = 30万円が課税対象
  • 納税額:30万円 × 20.315% = 60,945円

節税効果:

繰越控除を利用しなかった場合の3年間の税額:(50万円 + 30万円 + 100万円)× 20.315% = 365,670円
実際の税額:60,945円
節税額:304,725円

譲渡損失の繰越控除の仕組みを説明した図
譲渡損失の繰越控除の流れと節税効果

配当所得との損益通算

繰越した譲渡損失は、配当所得とも損益通算できます。ただし、配当所得について申告分離課税を選択する必要があります。

【ケース5】個人事業主Eさんの損益通算

前年からの繰越損失:80万円

当年の状況:

  • 譲渡益:30万円
  • 配当金:40万円

申告分離課税を選択した場合:

  • 譲渡益と配当金の合計:70万円
  • 繰越損失と相殺:70万円 – 80万円 = マイナス10万円
  • 課税所得:0円
  • 配当金から源泉徴収されていた税金が全額還付される
  • 還付額:40万円 × 20.315% = 81,260円
  • 残り10万円は翌年に繰越可能

このように、繰越損失がある場合は配当金についても申告分離課税を選択することで、源泉徴収された税金の還付を受けることができます。

繰越控除の申告手続き

譲渡損失の繰越控除を受けるための申告手続きは以下の通りです。

  1. 確定申告書第三表(分離課税用)の作成
  2. 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書の作成
  3. 所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)の作成
  4. 特定口座年間取引報告書の添付(特定口座の場合)

繰越期間中は毎年、上記の付表を提出し続ける必要があります。

個人事業主・フリーランスの株式投資と確定申告の実務

個人事業主やフリーランスの方は、事業所得の確定申告に加えて株式投資の所得も申告する必要があります。ここでは実務上のポイントを解説します。

事業所得と株式の所得を同時に申告する方法

個人事業主の確定申告では、複数の所得を同時に申告することになります。

所得の種類 使用する申告書 課税方法 損益通算
事業所得 第一表、青色申告決算書 総合課税(累進税率) 他の所得と通算可能
株式譲渡所得 第一表、第三表(分離課税用) 申告分離課税(20.315%) 株式内のみ通算可能
配当所得(総合) 第一表 総合課税(累進税率) 他の所得と通算可能
配当所得(分離) 第一表、第三表(分離課税用) 申告分離課税(20.315%) 株式内のみ通算可能
ポイント: 事業所得が赤字でも、株式の譲渡益には税金がかかります。逆に、事業所得が黒字でも、株式の譲渡損失とは相殺できません。それぞれ独立して計算されます。
個人事業主の確定申告書での事業所得と株式所得の記入箇所
確定申告書での事業所得と株式所得の記入位置

会計ソフトでの株式所得の入力方法

個人事業主の多くが使用している会計ソフトでは、事業所得の計算が中心となります。株式の所得については、会計ソフトとは別に管理するのが一般的です。

  • freee:「確定申告」メニューから「その他の所得」として株式譲渡所得や配当所得を入力できます
  • マネーフォワード クラウド確定申告:「確定申告書」画面で分離課税所得を入力できます
  • 弥生の青色申告オンライン:「確定申告書の作成」から株式等の所得を入力できます

会計ソフトの選び方については、個人事業主向け会計ソフト徹底比較の記事で詳しく解説しています。

国民健康保険料への影響を考慮する

個人事業主の場合、株式所得の申告方法によって国民健康保険料が変わる可能性があります。

申告方法 国保料への影響
特定口座(源泉徴収あり)で申告しない 影響なし(所得に含まれない)
申告分離課税で申告 所得に含まれ、保険料が増加する可能性
総合課税で申告 所得に含まれ、保険料が増加する可能性
注意: 令和6年分以降は、所得税と住民税で異なる申告方法を選択できなくなったため、国保料への影響をより慎重に検討する必要があります。配当控除で所得税が減っても、国保料の増加でトータルではマイナスになる可能性もあります。

実際の申告スケジュールと準備

個人事業主が株式投資の所得も含めて確定申告する場合のスケジュールは以下の通りです。

STEP 1:1月中(年明け後すぐ)

  • 証券会社から特定口座年間取引報告書を受け取る
  • 配当金の支払通知書を確認する
  • 事業の帳簿を締める準備を始める
STEP 2:2月上旬

  • 青色申告決算書を完成させる
  • 株式の申告方法を決定する(総合課税 or 申告分離課税 or 申告不要)
  • 複数口座がある場合、損益通算の計算をする
STEP 3:2月中旬~3月15日

  • 確定申告書第一表・第三表を作成
  • e-Taxまたは税務署窓口で提出
  • 納税または還付金の受取

e-Taxを利用した電子申告については、青色申告65万円控除の要件の記事で詳しく解説しています。

▲ 個人事業主が株式投資の所得を含めて確定申告する方法の解説動画

外国株式・ETF・投資信託の確定申告

国内株式だけでなく、外国株式やETF、投資信託に投資している場合の確定申告についても解説します。

外国株式の配当金と外国税額控除

外国株式(米国株など)の配当金は、外国で課税された後、さらに日本でも課税されるため、二重課税となります。この二重課税を調整するのが外国税額控除です。

  • 米国株の場合:現地で10%の税金が源泉徴収され、さらに日本で20.315%が課税されます
  • 外国税額控除を申請すると、外国で支払った税金の一部または全部を日本の税金から控除できます