決算賞与で節税する方法|支給要件と未払計上の注意点【法人向け】


決算期末を迎えて予想以上の利益が出た際、「従業員への還元と節税を両立できないか」と考える経営者の方は多いでしょう。決算賞与は従業員のモチベーション向上と法人税の節税を同時に実現できる有効な手段ですが、税務上の要件を満たさなければ損金算入が認められず、思わぬ税務リスクを招く恐れがあります。本記事では、決算賞与による節税の仕組み、未払計上する際の厳格な支給要件、実務上の注意点まで、法人の決算対策に必要な知識を詳しく解説します。

決算賞与を活用した節税は多くの中小企業で実施されていますが、税務調査で否認されるケースも少なくありません。特に未払計上する場合は、法人税法第34条と法人税法施行令第72条の3に定められた厳格な要件をすべて満たす必要があります。会計屋.comでは、実務で失敗しないための具体的なポイントをわかりやすくお伝えします。

決算賞与とは?節税効果の仕組みを理解する

決算賞与とは、事業年度末の業績に応じて従業員に支給する臨時の賞与のことです。通常の夏季・冬季賞与とは別に、決算期末近くに支給を決定し、従業員への還元と法人税の節税を目的として活用されます。

決算賞与による節税の基本原理

法人税は課税所得(益金-損金)に対して課税されます。決算賞与を損金に算入することで課税所得を圧縮し、法人税額を減らすことができます。例えば、課税所得が1,000万円の場合と決算賞与500万円を支給して課税所得が500万円になった場合を比較してみましょう。

項目 賞与なし 決算賞与500万円
課税所得 1,000万円 500万円
法人税等(実効税率約33%) 約330万円 約165万円
節税効果 約165万円

※実効税率は法人の規模や所在地により異なります。上記は一般的な中小法人の目安です。

ポイント: 決算賞与500万円を支給することで、約165万円の法人税を節税できる計算になります。ただし実際には従業員への支給額から源泉所得税や社会保険料が控除されるため、会社の実質的なキャッシュアウトとのバランスを考慮する必要があります。
決算賞与による節税効果のイメージ図
決算賞与を活用した法人税の節税効果シミュレーション

通常の賞与との違い

決算賞与は支給時期と目的において通常の賞与と異なります。

  • 支給時期:決算期末近くに決定・支給される臨時賞与
  • 支給目的:業績連動型で、利益の従業員への還元と節税対策を兼ねる
  • 金額決定:確定した業績をもとに経営判断で決定される
  • 税務上の取扱い:未払計上する場合は厳格な要件がある

決算賞与を損金算入するための3つの要件

決算賞与を当期の損金に算入するには、法人税法施行令第72条の3に規定された要件をすべて満たす必要があります。特に未払計上する場合は以下の3要件が厳格に求められます。

要件1:事業年度終了の日までに支給額を通知すること

決算賞与の支給を受けるすべての従業員に対して、事業年度終了の日(決算日)までに、各人別に支給額を通知しなければなりません。

具体的な通知方法:

  • 書面による通知書を各従業員に交付(最も確実)
  • 電子メールでの通知(受信確認を取得することが望ましい)
  • 給与明細に明記して配布
注意: 「総額○○円を従業員で分配」といった曖昧な通知では要件を満たしません。必ず「各人別に」具体的な金額を明示する必要があります。また、口頭での通知は税務調査で証明が困難なため、必ず書面または電子的な記録が残る方法で通知してください。

要件2:通知した全額を1ヶ月以内に支払うこと

事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に、通知した全従業員に対して通知額の全額を支払わなければなりません。

例えば3月決算法人の場合、3月31日までに通知し、4月30日までに支給する必要があります。この期限を1日でも過ぎると、損金算入が認められなくなります。

ポイント: 「1ヶ月以内」とは、決算日の翌日から起算して1ヶ月後の応当日までを指します。例:3月31日決算の場合、4月30日までに支給。ただし、応当日がない場合(例:1月31日→2月末)は月末日が期限となります。

要件3:通知した金額を損金経理していること

支給額を事業年度の決算において「損金経理」(費用として計上)している必要があります。未払賞与として貸借対照表の負債に計上し、損益計算書で賞与として費用処理することが求められます。

決算賞与の未払計上における仕訳例
決算賞与を未払計上する場合の会計仕訳イメージ

3要件の関係性を整理する

タイミング 要件 実施内容
決算日まで 要件1・3 各従業員への個別通知、未払賞与として損金経理
決算日翌日から1ヶ月以内 要件2 通知額の全額支給

▲ 決算賞与の損金算入要件をわかりやすく解説した動画

未払賞与として計上する際の実務上の注意点

決算賞与を未払計上する場合、税務調査で否認されないための実務上のポイントがあります。ここでは実際の経理処理と証拠書類の保管について解説します。

会計仕訳の正しい処理方法

決算日における未払賞与の計上仕訳は以下のようになります。

【決算日(3月31日)の仕訳】
借方:賞与 5,000,000円 / 貸方:未払賞与 5,000,000円

【支給日(4月20日)の仕訳】
借方:未払賞与 5,000,000円 / 貸方:現金預金 3,800,000円
                   預り金(源泉税)500,000円
                   預り金(社会保険料)700,000円

※上記の金額は例示です。実際の源泉徴収税額や社会保険料は個別に計算が必要です。

証拠書類の作成と保管

税務調査では決算賞与の要件充足を証明する書類の提示が求められます。以下の書類を必ず作成・保管してください。

  • 賞与通知書:各従業員への個別通知書(従業員の受領印または受領確認の記録)
  • 取締役会議事録:決算賞与支給を決議した記録(決算日以前の日付)
  • 支給明細書:実際に支給した際の明細(支給日、支給額、控除額が明確に記載)
  • 振込記録:各従業員への振込が確認でき

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