複数事業を営む個人事業主向け会計ソフト|事業別損益管理とセグメント分析


「複数の事業を営んでいるけれど、会計ソフトで事業別の損益管理ができなくて困っている」「どの事業が本当に儲かっているのか分からない」——そんな悩みを抱える個人事業主・フリーランスの方は少なくありません。複数事業を運営する場合、全体の売上だけでなく事業ごとの収益性を把握することが経営判断の重要な鍵となります。

この記事では、複数事業を営む個人事業主に最適な会計ソフトの選び方から、事業別損益管理(部門管理・セグメント会計)の具体的な設定方法、そして実際の活用事例まで徹底解説します。freee、マネーフォワード、弥生会計など主要ソフトの機能比較はもちろん、確定申告時の注意点、税務上の事業区分の考え方まで網羅的にカバーしています。

記事を読み終える頃には、自分のビジネススタイルに合った会計ソフトを選び、事業別の収益を正確に把握できる体制を整えられるでしょう。複数事業を効率的に管理し、成長する事業に資源を集中させる経営判断ができるようになります。

複数事業を営む個人事業主が直面する会計管理の課題

個人事業主として複数の事業を同時に営むケースは年々増加しています。例えば、Webデザイン業とオンライン講座販売を兼業している方、飲食店経営とケータリング事業を両立している方、不動産賃貸業とコンサルティング業を行っている方など、その形態はさまざまです。

複数事業運営で生じる典型的な会計上の問題点

複数事業を運営する際、多くの個人事業主が以下のような問題に直面します。

  • どの事業が本当に利益を生んでいるのか不明:全体の売上は把握できても、事業Aと事業Bの個別の収益性が見えない
  • 共通経費の按分方法が曖昧:オフィス賃料や通信費など、複数事業で共有する経費の配賦基準が定まっていない
  • 確定申告時に事業区分で混乱:所得税青色申告決算書の「営業等(一般)」「不動産」「農業」のどこに何を記載すべきか分からない
  • 資金繰りの実態が把握できない:事業別のキャッシュフローが見えず、どの事業に追加投資すべきか判断できない
  • 記帳作業が煩雑化:事業ごとに取引を分類する手間が膨大で、会計処理が後回しになる
複数事業を営む個人事業主のイメージ図
複数事業の並行運営では、事業ごとの損益把握が経営の要となる

事業別損益管理ができないことのデメリット

事業別の収支が不明確なまま経営を続けると、以下のような深刻な問題が発生する可能性があります。

注意: 赤字事業に気づかず経営を続けてしまうリスクがあります。全体では黒字に見えても、実は事業Aの利益で事業Bの赤字を補填している状態に陥り、適切な経営判断ができなくなります。
問題点 具体的な影響 対策
投資判断の誤り 収益性の低い事業に時間とお金を投資し続ける 事業別ROI(投資収益率)の可視化
資金不足の発生 特定事業の資金需要を見誤り、運転資金が枯渇 事業別キャッシュフロー管理
税務リスク 事業区分の誤りによる申告ミス、税務調査時の説明困難 税務要件に沿った事業区分設定
価格設定の失敗 原価計算が不正確で、赤字価格で販売してしまう 事業別原価管理の徹底
融資時の不利 金融機関に事業別の収益性を説明できず融資審査で不利に セグメント情報の整備

会計ソフトによる事業別管理の必要性

これらの課題を解決するには、会計ソフトの「部門管理機能」「セグメント管理機能」「タグ管理機能」などを活用した事業別損益管理が不可欠です。適切な会計ソフトを導入すれば、取引登録時に事業区分を選択するだけで、自動的に事業別の損益計算書や収支レポートが生成されます。

さらに、主要会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生会計など)には、確定申告時に必要な事業区分(営業等・不動産・農業)への自動振り分け機能も搭載されているため、税務申告の正確性も向上します。

会計ソフトにおける事業別管理機能の種類と違い

会計ソフトで複数事業を管理する際、ソフトによって「部門」「セグメント」「タグ」「取引先」など、さまざまな名称・方式で事業別管理機能が提供されています。それぞれの特徴と使い分けを理解することが重要です。

部門管理機能とは

部門管理機能は、主に企業向け会計ソフトで標準的に搭載されている機能です。事業所やプロジェクト、製品ラインなど、組織を「部門」という単位で分類し、部門ごとに収益と費用を集計します。

ポイント: 部門管理では、全ての取引に対して必ず1つの部門を割り当てます。部門未設定の取引があると集計に漏れが生じるため、「共通部門」や「本部」などの受け皿部門を設定するのが一般的です。
  • メリット:会計帳簿の基本構造として組み込まれており、正式な部門別損益計算書が作成できる
  • デメリット:1取引に対して1部門しか設定できない場合が多く、複数事業にまたがる経費の按分が複雑
  • 向いているケース:明確に分離できる複数の事業所や店舗を運営している場合
会計ソフトの部門管理画面の例
部門管理機能では事業ごとに独立した損益計算が可能になる

セグメント管理機能(タグ管理)とは

セグメント管理やタグ管理は、より柔軟な分類方法です。1つの取引に対して複数のタグを付与できるため、「事業別」「顧客別」「プロジェクト別」など多次元での分析が可能です。

  • メリット:柔軟な分類が可能で、後から分析軸を追加・変更しやすい。複数タグの組み合わせで詳細分析ができる
  • デメリット:運用ルールを明確にしないと分類が曖昧になりがち。確定申告書への転記が自動化されない場合も
  • 向いているケース:プロジェクトベースの仕事が多い、分析軸を柔軟に変えたい場合

取引先(補助科目)による管理

一部の会計ソフトでは、取引先(得意先・仕入先)や補助科目を活用して事業別管理を行う方法もあります。例えば、事業Aに関連する売上先を「A事業グループ」としてまとめる方法です。

  • メリット:追加の設定なしで標準機能のみで管理できる。取引先別損益の把握が容易
  • デメリット:共通経費の配賦が困難。取引先の数が多いと管理が煩雑化
  • 向いているケース:事業と取引先が1対1で対応している場合

各方式の比較表

管理方式 柔軟性 多次元分析 確定申告連携 設定の容易さ
部門管理 △(固定的)
セグメント(タグ)
取引先管理
プロジェクト管理

個人事業主に最適な管理方式の選び方

個人事業主が複数事業を管理する場合、以下の基準で管理方式を選ぶことをおすすめします。

  1. 事業の数が2〜3程度で明確に分離できる場合:部門管理が最適。確定申告との連携もスムーズです
  2. プロジェクトごとの収益管理が必要な場合:タグ管理やプロジェクト管理機能を活用
  3. 事業区分が流動的で、後から分析軸を変えたい場合:セグメント(タグ)管理が柔軟
  4. シンプルに管理したい場合:取引先分類から始めて、必要に応じて部門管理に移行

▲ 会計ソフトの部門管理機能を使った事業別損益管理の実例解説

主要会計ソフトの複数事業管理機能を徹底比較

個人事業主向けの主要会計ソフトである「freee」「マネーフォワード クラウド確定申告」「やよいの青色申告オンライン」について、複数事業管理機能を詳細に比較します。それぞれの強みと弱みを理解して、自分のビジネススタイルに合ったソフトを選びましょう。

freee(フリー)の事業別管理機能

freeeでは「タグ機能」を使って複数事業を管理します。1つの取引に対して複数のタグを付けられるため、非常に柔軟な分析が可能です。

  • 管理方式:タグによるセグメント管理(複数タグ付与可能)
  • 設定の容易さ:タグを作成するだけで即座に利用開始できる
  • レポート機能:タグごとの損益レポート、収益レポート、費用レポートを自動生成
  • 確定申告連携:事業区分(営業等・不動産等)への自動振り分けに対応
  • 料金プラン:スターター月額1,480円〜、スタンダード月額2,680円〜(年払いでさらに割引)
ポイント: freeeのタグ機能は最大50個まで作成可能。「事業別」「顧客別」「プロジェクト別」など、目的に応じてタグを組み合わせることで、多角的な経営分析ができます。例えば「Web制作事業×A社案件」というように2つのタグを併用可能です。
freeeのタグ管理画面とレポート例
freeeではタグごとの損益レポートがリアルタイムで確認できる

freeeの強みは、スマホアプリでもタグ選択が簡単にでき、外出先での記帳時にも事業区分を忘れずに設定できる点です。また、銀行口座やクレジットカードとの自動連携時に、「この取引先からの入金は常にタグAを付ける」という自動ルール設定もできるため、手間が大幅に削減されます。

一方で注意点として、タグ付けを忘れた取引が発生しやすいことが挙げられます。定期的に「タグ未設定の取引」をフィルタリングしてチェックする習慣が必要です。詳細はfreeeの評判・口コミ記事も参考にしてください。

マネーフォワード クラウド確定申告の事業別管理機能

マネーフォワード クラウド確定申告では「部門」と「タグ」の両方の機能を利用できます。正式な部門別損益計算書を作成したい場合は部門機能、より柔軟な分析をしたい場合はタグ機能を使い分けられます。

  • 管理方式:部門管理+タグ管理(両方併用可能)
  • 設定の容易さ:部門は事前設定が必要だが、マスタ登録は簡単
  • レポート機能:部門別損益計算書、部門別貸借対照表、タグ別集計など豊富
  • 確定申告連携:部門を事業区分に対応付けることで申告書への自動転記が可能
  • 料金プラン:パーソナルミニ月額1,078円〜、パーソナル月額1,408円〜(年払いで約30%割引)

マネーフォワードの最大の特徴は、部門別の貸借対照表まで作成できる点です。これにより事業別の資産・負債状況まで把握できるため、本格的な事業別会計を行いたい方に適しています。

活用例: 不動産賃貸業とコンサルティング業を営むBさんは、「不動産部門」と「コンサル部門」を設定。不動産部門には物件ごとのタグも設定し、物件別収支と部門別収支の両方を管理しています。確定申告では不動産部門を「不動産所得」、コンサル部門を「事業所得」に自動振り分けしています。
マネーフォワードの部門別損益計算書画面
マネーフォワードでは部門別の詳細な財務諸表が自動生成される

マネーフォワードは他のクラウドサービス(請求書・経費精算・給与など)との連携が強力で、事業が成長して従業員を雇用する段階になっても継続して使える拡張性があります。

やよいの青色申告オンラインの事業別管理機能

やよいの青色申告オンラインは、「取引先」と「補助科目」を活用した事業別管理が基本となります。シンプルな設計で初心者にも分かりやすい反面、高度な多次元分析には制約があります。

  • 管理方式:取引先分類+補助科目(セルフプランでは部門機能なし)
  • 設定の容易さ:取引先を登録するだけで利用可能
  • レポート機能:取引先別残高一覧、科目別取引先集計など
  • 確定申告連携:事業区分の入力は手動だが、ガイドが充実
  • 料金プラン:セルフプラン年額9,680円、ベーシックプラン年額15,180円(初年度無料キャンペーンあり)

やよいのメリットは、操作画面が非常にシンプルで、会計知識がない方でも直感的に使える点です。電話・メール・チャットのサポートも充実しており、初めて会計ソフトを使う方の心強い味方になります。

一方で限界として、個人事業主向けプランでは正式な「部門管理機能」が搭載されていないため、複雑な複数事業管理には不向きです。事業数が2つ程度で、シンプルな管理で十分な場合に適しています。

主要会計ソフト比較総まとめ

項目 freee マネーフォワード やよいオンライン
事業別管理方式 タグ管理(柔軟) 部門+タグ(本格的) 取引先分類(シンプル)
複数タグ付与 ◎ 可能 ◎ 可能 × 不可
部門別損益計算書 ○ タグレポート ◎ 正式な財務諸表 △ 集計表のみ
確定申告連携 ◎ 自動振り分け ◎ 自動振り分け ○ 手動設定
初心者向け ◎ 直感的UI ○ やや高機能 ◎ シンプル
月額料金(税込) 1,480円〜 1,078円〜 807円〜(年払換算)
おすすめの人 柔軟な分析がしたい人 本格的に管理したい人 シンプルに使いたい人

3つのソフトを詳しく比較した記事はこちらの会計ソフト比較記事でも解説していますので、併せてご覧ください。

事業別管理の具体的な設定方法(ソフト別実践ガイド)

ここからは、各会計ソフトで実際に複数事業管理を始める際の具体的な設定手順を解説します。初めて設定する方でも迷わないよう、ステップバイステップで説明します。

freeeでの事業別管理設定手順

freeeでタグを使った事業別管理を開始する手順は以下の通りです。

STEP 1: タグの作成
freeeにログイン後、「設定」→「タグ」から新しいタグを作成します。例:「Web制作事業」「講座販売事業」「コンサル事業」など、運営する事業名をそのままタグ名にするのが分かりやすいでしょう。
STEP 2: 既存取引へのタグ付け
既に登録済みの取引データがある場合は、「取引」メニューから過去の取引を一括選択し、タグを一括付与できます。取引先名や摘要でフィルタリングしてから一括処理すると効率的です。
STEP 3: 自動登録ルールの設定
銀行口座やクレジットカードから自動取得した取引に、自動的にタグを付ける「自動登録ルール」を設定します。例えば「取引先名にABC社が含まれる場合は自動的に『Web制作事業』タグを付ける」といったルールです。
STEP 4: レポートで確認
「レポート」→「収益レポート」または「損益レポート」を開き、画面上部の「タグで絞り込む」から特定のタグを選択すると、その事業だけの損益が表示されます。複数タグの比較も可能です。
freeeのタグ設定画面とレポート確認手順
freeeのタグ設定は数クリックで完了し、即座にレポート確認が可能

マネーフォワード クラウド確定申告での設定手順

マネーフォワードで部門管理を開始する手順を説明します。

STEP 1: 部門の作成
「各種設定」→「事業所設定」→「部門設定」から新規部門を作成します。部門コード(任意)と部門名を登録。例:「001 Web制作部門」「002 物販事業部門」など。
STEP 2: 勘定科目との紐付け設定(任意)
特定の勘定科目(例:「売上高」)を部門別に管理するかを設定します。通常は売上・仕入・経費を部門別管理の対象とし、資産・負債は共通管理とするのが一般的です。
STEP 3: 取引入力時の部門選択
日々の仕訳入力時に、画面上の「部門」欄から該当部門を選択します。銀行連携の自動取得取引も、確認画面で部門を選択できます。部門未選択の場合は「共通」として集計されます。
STEP 4: 部門別レポートの確認
「レポート」→「部門別損益計算書」を開くと、各部門の収益・費用・利益が一覧表示されます。PDF出力や Excel出力も可能で、金融機関への提出資料としても活用できます。

やよいの青色申告オンラインでの設定手順

やよいオンラインでは取引先分類を活用します。

STEP 1: 取引先の登録
「設定」→「取引先」から、事業ごとに代表的な取引先を登録します。または「【事業A】」「【事業B】」のような架空の取引先名を作成し、事業区分として利用する方法もあります。
STEP 2: 補助科目の設定(推奨)
「設定」→「科目設定」から、「売上高」勘定科目に補助科目として「Web制作売上」「講座売上」などを設定します。これにより勘定科目レベルで事業別集計が可能になります。
STEP 3: 取引入力時の選択
かんたん取引入力画面で、取引先と補助科目を選択して記帳します。毎回選択するのが手間な場合は、取引テンプレートを作成しておくと便利です。
STEP 4: レポート確認
「レポート・帳簿」→「取引先別残高一覧」または「補助科目集計表」から事業別の集計を確認できます。ただし損益計算書形式ではないため、Excelなどで加工が必要です。
各会計ソフトの設定画面の比較
ソフトごとに設定方法は異なるが、基本的な流れは共通している

共通の注意点とベストプラクティス

どの会計ソフトを使う場合でも、以下の点に注意すると事業別管理がスムーズに運用できます。

  • 事業区分の粒度を適切に設定:細かすぎると管理が煩雑、粗すぎると分析が不十分に。最初は大分類で始め、必要に応じて細分化
  • 共通経費の配賦ルールを明確化:家賃・通信費など複数事業で共有する経費の配分基準(売上比率、面積比率、時間比率など)を決めておく
  • 月次での見直し習慣:毎月末に事業別損益を確認し、未分類取引がないかチェック
  • 期首に年間方針を決定:年度途中で分類基準を変えると比較分析が困難になるため、期首に年間の方針を決定
  • 税理士と連携:確定申告時の事業区分と会計ソフトの設定を一致させるため、税理士にも設定内容を共有

▲ 会計ソフトの初期設定で失敗しないためのポイント解説動画

税務上の事業区分と確定申告時の注意点

会計ソフトで事業別管理をする際、税務申告時の「事業区分」との整合性を保つことが非常に重要です。ここでは所得税法上の事業区分の考え方と、確定申告時の実務ポイントを解説します。

所得税における事業所得の区分

個人事業主の確定申告では、所得を10種類に区分します。複数事業を営む場合、特に重要なのが以下の区分です。

所得区分 対象となる事業の例 使用する申告書
事業所得(営業等) 製造業、卸売業、小売業、サービス業、フリーランス業務など一般的な事業 青色申告決算書(一般用)
事業所得(農業) 農業、林業、養鶏など 青色申告決算書(農業所得用)
不動産所得 土地・建物の賃貸、駐車場経営など 青色申告決算書(不動産所得用)
雑所得 事業と認められない副業、単発の原稿料など 確定申告書Bの雑所得欄
重要: 令和4年分以降、副業収入が「事業所得」か「雑所得」かの判定基準が明確化されました。概ね、帳簿書類を保存し、かつ収入金額が300万円超の場合は事業所得、それ以外は原則として雑所得とされます(例外あり)。

複数事業と青色申告決算書の関係

青色申告を行う個人事業主は、事業の種類に応じて異なる様式の青色申告決算書を提出します。

  • 営業等の事業のみ:青色申告決算書(一般用)1枚
  • 不動産所得と事業所得の両方:青色申告決算書(不動産所得用)と(一般用)の2枚
  • 農業所得と営業等:青色申告決算書(農業所得用)と(一般用)の2枚

重要なのは、営業等の事業が複数ある場合でも、青色申告決算書は1枚にまとめるという原則です。例えば「Web制作業」と「オンライン講座販売業」の2つの事業を営んでいても、両方とも「事業所得(営業等)」であれば、1枚の青色申告決算書(一般用)に合算して記載します。

青色申告決算書の記入例
青色申告決算書では複数事業を合算して記載するのが原則

会計ソフトと確定申告書の対応付け

会計ソフトの事業別管理と確定申告書の関係を整理すると以下のようになります。

ベストプラクティス: 会計ソフトでは詳細に事業別管理を行い(例:Web制作、講座販売、コンサル等を別々に管理)、確定申告時にこれらを「営業等」として合算する運用が推奨されます。主要会計ソフトは申告書作成時に自動的に合算してくれる機能があります。

具体的な対応例:

  1. 会計ソフトで「Web制作事業」「講座販売事業」「コンサル事業」の3つを部門またはタグで管理
  2. 各事業の損益を個別に把握し、経営判断に活用
  3. 確定申告書作成時、ソフトが自動的に3事業を合算して「事業所得(営業等)」として青色申告決算書に転記
  4. 必要に応じて、事業別の内訳を補足資料として税理士に提出

詳細な確定申告の手順については個人事業主の確定申告やり方完全ガイドも参照してください。

事業専従者給与と複数事業の注意点

青色事業専従者給与を支払っている場合、複数事業間での按分方法が問題になることがあります。専従者が複数の事業に従事している場合、合理的な基準(従事時間、売上比率など)で按分する必要があります。

会計ソフトでは、専従者給与を按分登録する機能があるソフトと、一つの事業に全額計上してから振替処理を行うソフトがあります。設定方法は各ソフトのマニュアルを確認しましょう。

消費税の課税事業者判定と複数事業

複数事業を営む場合でも、消費税の課税事業者判定は全事業の売上を合算して判定します。つまり、事業Aの売上が800万円、事業Bの売上が400万円の場合、合計1,200万円となり、2年後には消費税の課税事業者となります。

注意: 令和5年10月からインボイス制度が開始されました。複数事業を営む場合でも、適格請求書発行事業者の登録は1つの事業者番号で全事業をカバーします。事業ごとに別々の登録はできません。

事業別損益分析の実践テクニック

会計ソフトで事業別データを集計できるようになったら、次はそのデータを経営判断に活用する段階です。ここでは実務で使える分析テクニックを紹介します。

事業別収益性分析の基本指標

複数事業の収益性を比較する際、以下の指標を定期的にチェックしましょう。

指標 計算式 目安・活用法
売上高営業利益率 (営業利益÷売上高)×100 業種により異なるが、10%以上なら優良。事業間で比較して注力先を決定
限界利益率 (売上高−変動費)÷売上高×100 高いほど収益性が高い。追加受注の判断基準にも
ROI(投資利益率) (利益÷投資額)×100 事業への投資効率を測定。設備投資や広告費の効果測定に
労働生産性 売上高÷労働時間 時間あたりの稼ぎを比較。時間配分の最適化に
顧客獲得単価(CAC) 広告宣伝費÷新規顧客数 事業ごとの集客コスト比較。マーケティング予算配分に

ケーススタディ:複数事業を営むフリーランスCさんの分析例

実際の事例を見てみましょう。Cさん(30代、フリーランス)は以下3つの事業を営んでいます。

  • 事業A:Web制作受託 – 年商600万円
  • 事業B:オンライン講座販売 – 年商300万円
  • 事業C:技術書執筆 – 年商100万円

Cさんはマネーフォワードの部門管理機能を使い、各事業の損益を以下のように集計しました。

項目 事業A(Web制作) 事業B(講座) 事業C(執筆)
売上高 6,000,000円 3,000,000円 1,000,000円
直接費 △500,000円 △300,000円 △50,000円